お昼のはなし
バブみ道日丿宮組
お題:優秀な軽犯罪 制限時間:15分
お昼のはなし
「弁当泥棒でも犯罪は犯罪だぞ?」
美味しそうに『僕のもの』だった弁当を彼女はパクパクと口に運んでる。
「君の妹さんが作る料理は絶品でね。毎日食べても飽きないよ」
なぜ偉そう。
「確かに僕の妹の料理は絶品さ。毎日食べてる僕が保証する。でも、でもね。どうして昼を抜かれなければいけないんだ」
手渡されるビニール袋に入ってるのは菓子パン。
メロンパン、アンパン、ジャムパン、ドーナツと、どれもカロリーが高めなチョイスが女子らしさが垣間見れない。
「気に入らない? ほら男子ってがつがつしたの好きじゃない?」
「いや……それだったら焼きそばパンとかカツサンドとかそういうのじゃないかな」
もっともそういったガッツリ系を昼に食べる元気は僕にはない。だからこそ、妹が僕のために作ってくれる昼は優しさに溢れてるものだ。
「そうか。じゃぁ明日はそうするよ」
「普通に窃盗予告しないでくれない? 僕は妹のご飯が食べたいんだ」
「奇遇だね。私も妹さんのお弁当を食べたいんだ」
ため息しか出ない。
「なら、そろそろうちにくればいいじゃないか。歓迎するよ」
「冷やかされるのは嫌だからね。今のままがいい」
既に遅い気がする。
僕と彼女が付き合いだしたのは小学生の頃。男子生徒にいじめられたところを助けたのがきっかけだ。あの頃はほんと可愛らしくお淑やかな女子生徒だったのにどうしてこうなった。
元気になったといえば聞こえはいいけど、元気すぎるのも考えものだ。
「なら、妹に弁当頼めばいいじゃないか。というよりは僕に君が作ってくれてもいいんじゃないか」
未だに彼女の弁当は食べたことがない。
「うーん。妹さんと比べられるのがちょっと嫌かな」
「そんなことはしないよ。妹のは妹、君のは君の愛がつまってる」
ぷくぅと彼女は頬を赤くしながら膨らませた。
「あんま恥ずかしいこと言わないで」
「真実だろ。僕は君の彼氏なんだから」
「う、うん」
静かになると、彼女は箸で唐揚げを取りこっちに向けた。
「じゃ、じゃぁ、あーん」
「あーん」
うん、美味しい。
彼女はトマトみたいに真っ赤になったけど、僕は平常心。
中学校でさんざん冷やかされたから慣れてしまった。
彼女は強がってはいるものの本質は変わらない。素が可愛いからそのままでいてほしかったりもするけど、強気もの彼女も彼女だ。両方受け入れる。
「パン食べる?」
「さすがに食べないと午後の授業が持たない」
彼女からビニール袋を受け取り、メロンパンを開封する。1つだけでカロリーが足りるなら、これで十分だろう。他は妹に持って帰るか。
「なんにしても妹のご飯は僕のだからそろそろ考えておいてくれよ」
わかったと彼女は頷いて、それから世間話を始めたのであった。
お昼のはなし バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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