狐と人

バブみ道日丿宮組

お題:ワイルドな狐 制限時間:15分

狐と人

 夢の世界で会えたというのなら、それはきっと現実のことなのでしょう。

「よしよし」

 早朝にチャイムが鳴らされ一体誰なのかと玄関に出てみれば、一匹の狐がそこにいました。全く何の冗談だろうかと3度思考した後にやっと言葉を作り出せました。

『あなたはどうしてここにやってきたの?』

 狐に人の言葉が通じるとかそんな考えは頭に過りませんでした。

 そうして私は狐を家に入れました。

 コンコンという相槌のような答えが入れてほしいと感じたからです。

 油揚げはなかったので、適当なものをご飯とあげました。もぐもぐするその姿はとても可愛かったので今も撫でてます。

 数分前に戸惑ってたのが不思議です。

 でも……、

『なかなか美味しいご飯ですね』

 テレパシーを飛ばしてくる狐はもっと不思議です。

「残飯なのだけど、喜んでくれたならちょっと嬉しいです」

 料理の腕は人並みだけど、喜んで食べてる様子を見るのは凄くいいです。

「それで夢で私を見たという話ですが何か深い意味はあるでしょうか?」

 その問いに狐はいったん食べることをやめて私を見つめます。

『幸運があなたにやってくる。夢の世界で出会った人物と一緒にいると幸運がやってくると言われてます。僕も幸せになってみたいのでその噂を実行してみることにしました』

 なるほど。幸せか。あまり身近にない言葉だ。

 私は生まれついてすぐに両親を失い、また親戚も連なる交通事故でなくしました。悪魔の子とも言われ、最終的には孤児院に送られることになりました。

 そこでの暮らしはたくさんの兄弟、姉妹たちができて多少は幸せでした。

 けど……お義母さん役の大人が1人ずつ辞めていって結局は崩壊しました。そこからの記憶はとても思い出したくないほど大変でした。

『もしかして幸せになりたくないですか?』

 数分黙ってたせいか狐が首を傾げてました。

「幸せという言葉がしっくりこなかったのです。具体的にはどうなるんでしょうか?」

『僕もわからないです。狐の仲間たちは楽しそうにしてますからそういうことなんじゃないですか?』

 お互いに首をさらに傾げました。

 幸せを知らない人間と狐。出会うべくして出会ったのかはさておき。これからの人生はなにか不思議なことになるのかもしれないです。

「じゃぁ暮らしてみますか? なにかできることはありますか?」

『人に化けることができるので、家のお手伝いはできると思います』

 化ける……と疑問を浮かべてるうちに、狐は1人の少女になりました。

「これでどうでしょう」

「すっぽんぽんなんですね」

 上から下まで何も身に着けてません。成長するところはまだ成長しておらず、出てるところも出てなかったです。

「適当な服をいただければ大丈夫かと思います」

 じーという視線を浴びました。

 そうです。私も大して成長してないのです。

 待っててくださいと、私はタンスの中をあさりながら今後についていろいろ考えることにしました。

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狐と人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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