牢屋といえば
バブみ道日丿宮組
お題:つらい牢屋 制限時間:15分
牢屋といえば
「……脱獄しないか?」
真顔で牢屋のルームメイトは宣告した。それは死刑と判決されるよりも衝撃的だ。
「監視されてる中でよくその話題出せるな」
監視カメラがある位置を見つめる。適度に動くそれは撮影してると示してる。
「監視員はできないと思ってるからほとんどカメラを見ていない。あと声もミュートだ」
「調べがついてるのか?」
「じゃなきゃ言わない」
なるほど。バカではないらしい。
牢屋の生活も半年間。楽しいことはなかった。牢屋から出れば変わるだろうか?
「俺はやってもないことで罪を償うつもりはない。こんな自由のない生活なんてまっぴらごめんだ」
「そうはいってもこっちは産まれてからずっとここだ」
犯罪者の子ども犯罪者。
母親が身ごもって逮捕され、出産を刑務所で行う。
きちんと大人になるまで教育されたが、外という世界は与えられない。牢屋というのが僕の手の範囲にある全て。
「なら、外に出よう。楽しいことは沢山あるぞ」
「楽しいことか」
どういったことが楽しいのだろうか。
球技大会とかあるのかな? たまに仲間たちとするキャッチボールは楽しい。外の世界ではそれだけでプロの仕事を行えるとかなんとかって死んだ仲間が言ってたっけな。
「具体的なプランとかはもう決まってるのか?」
「あぁ鍵はもうすぐ手に入るし、カメラの妨害もできる」
ドヤ顔で誇るルームメイトを見てると不思議となんとかいけそうな気がしてきた。
「俺は実家に帰る。お前もついてこい」
「実家か。ここが僕の実家のようなものだから少し気になるな」
「あぁ田舎だが都会より空気がいい」
そりゃいいな。ここは空気が悪い。違う世界もあるんだな……当たり前だけど。
「母さんに会いたいな」
「壁のさらに向こうの壁だ諦めろ。助かるのは自分だけだ」
そっか。
どうせなら母さんも連れて本当の家族の生活をしたかった。
「大丈夫だ。お前の母さんじゃないが俺のおふくろがいる。そこで甘えろ」
「できるかな?」
「あぁできるようになれるさ。お前は他のやつよりも頭が使える。おふくろは賢いやつが好きだ。俺よりも好かれる自信があるぞ」
ルームメイトが笑ったので思わずこちらも笑ってしまった。
外の世界か……いったい何があるんだろうか。
「写真は持っていっていい?」
「あぁ荷物にならないからな」
ポケットから母さんの写真を見つめ、またポケットにしまった。
牢屋といえば バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます