姫のための決闘
バブみ道日丿宮組
お題:それいけ馬鹿 制限時間:15分
姫のための決闘
馬鹿、馬鹿馬鹿! どうして、あの騎士と戦ってるのよ!
「はっ、はっ」
礼儀作法を無視しての全力疾走。
中庭まで4分はかからない。
窓……まどを飛び降りれば、1分。
ゴクリッ。
ここで迷ってれば、私の従士がぼこぼこになってしまう。
思い切り窓を開け、下を確認する。
そこでは彼と騎士が剣を何度もぶつけ合ってた。見物客もかなりいる。
もういくしかないとーー、
「おりゃあああああああああ!」
出したことのない大声が出た。
突然の来訪者に彼らはすぐに気が付き、私の従士は落下地点に待機し、見事に抱きとめた。
「ひ、姫さま、ご乱心ですか!? むびゅうう」
「あなたのほうが乱心なのですわ」
ほっぺたを上下左右に引っ張る。それはもうガムが伸び切るぐらいに。
「これは名誉のことなのです」
ほっぺを開放すると、彼は片膝をつき頭を垂れる。
「名誉のためといって、この学院のトップと戦う必要はないでしょう。もっとあなたに相応しい人物はたくさんいるはずでしょ」
それでもですと、普段聞かないような真面目声が返ってきた。
「あなたもあなたです。力の差が歴然なのにどうして決闘なんてなさってるのですか」
「これは決闘なんかじゃありませんよ。いわゆるショーです。あのお姫様の従士と学園トップのわたし。どちらが強いのか、輝いてるのか。そういった芸なのです」
相変わらずイライラすることばかりを並べてくる。
「こんな馬鹿みたいなものではなく、正式な試合でやるべきじゃないんでしょうか」
答えはわかってる。
それでは半殺しにしようとすれば、すぐに誰かが助けに入ってくる。
これは殺し合い。
馬鹿がつくほどの馬鹿が行う殺し合い。
騎士は私の恋を狙う馬鹿。彼は私の愛しい馬鹿。私はいつも遅れてやってくる馬鹿。
3馬鹿が揃ってた。
「姫さま。1本です。それだけお願いします」
「はぁ……」
彼は一途で頑固。はじまったものは終わらなきゃ満足しないタイプ。
「わかりませんが、わかりました。怪我はしないようにお願いします」
私がその場を離れると、中庭にできてたリングに彼と従士が入った。
そのあとの結果を書き残しておくのであれば、両者同時にノックダウンするというまた馬鹿らしい結果が生まれた。
でも、とても誇らしかった。
私のために頑張ってくれる馬鹿はいつでもうれしいものだから。
姫のための決闘 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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