第13話
起きてみると彼女の赤い目は寂しそうな目をしていた。
その理由は分からないが手元にあるのは俺の使い古した参考書だ。
その参考書は彼女の言うように俺にとっての努力の証であり、人に誇れるものだ。
だが、彼女にはそれは必要ないらしい、だから俺は天才だと褒めた。
しかし彼女は泣いてしまう、彼女にとってはそれは褒め言葉ではなかった。
俺のような努力をしなければ上に登れない人間は天才と呼ばれるために、上に登るために並々ならない努力をする。
人の上に立てるのはそれほどに嬉しいのだ。
だから、中には見栄を張る人さえいる。
だが、例え天才と呼ばれるに至らなくても努力をしたことは消えない。
きっとそれは未来の自分が自分を誇るときに必要になってくるだろう。
なら、最初から上に立っていた彼女は?。
人よりも簡単に上に上がれてしまう彼女にはそれがあるのだろうか。
俺にとって努力はするのが当たり前だ。
それをするのが楽しいまである。
だってそれは俺の生きた証なのだから。
彼女を改めて見てみる。
普通とはかけ離れた白い肌、普通ではない白い髪、普通になり得ない赤い瞳、天使のような顔つき、凡人には届きようのない程の頭の良さ。
なら、彼女は人間では無いのか?
答えは否だ。
そんなわけが無い。
人と人の間に生まれた人でしかない。
彼女は小鳥遊白愛という人間だ。
だから俺は彼女に聞いた。
「小鳥遊さんはさ、その名前、嫌い?」
その質問に彼女は泣きながら、笑顔で答える。
「いえ、2人の大切な人がくれた私の宝物です」
きっとその宝物は何かと何かを結ぶ糸のような物なのかもしれない
そして、その糸は酷くやつれてしまっていたのだろうか
▢◇▢◇▢
「そろそろ、動けるかな····」
「大丈夫なんですか?」
「多分少しは動ける····はず····」
「それでどこに向かってるのですか?」
「どこに向かってるんだろう」
分からない····
確か、小鳥遊さんとお化け屋敷のことで案を出し合おうとしてたんだっけ?
そう思い立ち上がると驚くことに俺の家の中がキレイになっていた。
「これは小鳥遊さんが?」
「はい、捨てていいか分からないものとかはまとめただけですけど一通りはできてると思います。
なのであなたが向かうべきはベットですね」
「いや、ご飯とか····」
「それくらい私が作りますから」
「あ、いや、ちょっと待って···」
「大丈夫ですよ、今度はちゃんと味をつけますから」
「そういう事じゃなくて····」
だが、彼女は行ってしまう。
おそらく彼女は忘れている。
この家に調味料はないことを···
数十秒もしない内に彼女は戻ってくる。
「どういうことですか?」
「前に言ったじゃん····家にはカップラーメンしかないよ」
「人としてどうなんです?」
「それ言える立場!?」
「はぁ、今私の家から持ってきますよ」
「あれ?あるんだっけ?」
「あぁ、いえ、あの事があったので買っておき·····なんでもないです。忘れてください」
あれれれれ?今の間はいったいなんだったんだろうか。
訝しげな視線を送ると彼女は目をそらす。
「小鳥遊さんってもしかして····」
▢◇▢◇▢
これはやばいかもですね···
もしかしたら味覚がないのがバレてしまったかもしれません。
そう思うとドキドキしてならない。
「小鳥遊さんってもしかして」
さて、どうしたものでしょうか、いっそその事を打ち明ける?
味覚がない事だけならそこまで隠す必要はないですし···
そもそも秋山さんに秘密にしておく必要はあるんでしょうかね···
いや、ダメですね。
また私は····
とりあえずなんでもない事のように取り繕わないと
「な、なんですか?」
ダメです···ちょっとテンパってしまっている感が抜けてない、、
私は次の秋山さんの言葉を待つ。
バレないで欲しいと思いながら。
そして、心のどこかに気づいて欲しいという思いを隠してしまったまま。
「もしかして偏食家?」
·······へ?
調味料をつけない偏食家なんているんですかね···
ま、まぁそういう事にしといた方がいいのかもですね!
「そ、そうなんですよ···」
「なら、わざわざごめんね。
俺に合わせてもらっちゃって」
謝らないでくださいよ···
私があなたに合わせたことなんて···
「いえ、気にしないでください。
食べてもらうなら美味しく食べて欲しいですから!」
「ならよかったよ」
いったい私はいつまで秘密を隠しておけるのでしょうか。
▢◇▢◇▢
「これは親子丼か」
「はい、本当はカレーとかシチューを作って明日の分までやっちゃいたかったんですけど時間も材料も足りなくて···」
「いや、今日の分をやってくれるだけありがたいよ、その上掃除までしてくれるなんて」
「先生には私が明日言っておきますので今日はゆっくり休んでくださいね」
「いや···」
きっとあの先生に言ったらどうして小鳥遊さんがそれを知ってるのかをしつこく聞いてくるだろうな
「学校には後で連絡をするからわざわざ小鳥遊さんが言う必要は無いよ」
「そうですか?ならそうしますね」
そのまま彼女はお盆を持ったまま台所に戻ると1度俺の部屋に寄ってくる。
「あの、」
「ん?どうした?」
「鍵はどうしたら···」
「あぁ、開けっぱでいいんじゃない?」
「だ、ダメですよ!危ないですよ?」
「大丈夫だって、」
こんな男子高校生の一人暮らしの部屋から盗むものなんて何があるんだろうか···
携帯なんてほとんど使ってないし財布はこの部屋にある。
もちろん何か他のものでも盗まれるのは困るが今はそんなことより動きたくないしな
「もし良かったら鍵を貸してくれませんか?そうすれば閉めとけますよ?」
「何か盗ったりしない?」
「すると思います?」
「いや、思わないな。まぁいいぞ盗むものなんてないだろうから」
「そうですね、いかがわしい本があったなら盗って処分したかったですが···」
お前は俺のオカンかよ···
まぁ、普通に考えて隣の男子高校生がそんなのを持っていたら普通に嫌だし、怖いんだろうな···
「残念だったね」
「えぇ、ほんとーに残念ですね」
色々含んだ言い方ですね···
「まぁ、何をするにしても程々に、それと冷めちゃう前に食べてくださいね。出来れば明日、感想をもらえると嬉しかったり···」
「あぁ、分かった···ん?明日?」
「えぇ、明日も来ようと思ったんですけど嫌でしたか?」
「来てくれる分にはありがたいんだけど···いいの?」
「それくらいいいですよ。それに最初に迷子になってた時のお礼もまだですし、こういう時はお互い様ですよ」
そう言って彼女はにっこりと笑うと俺に指示されたところから鍵を取ると彼女は自分の家に戻っていく。
そして俺は残された部屋で親子丼を食べるとむせてしまう。
「多分だけど砂糖と塩間違えたな···」
俺だってそれほどバカでは無い。
おそらく彼女には味覚がない。
そのせいで味見をしたところで気づけないのだろう。
さっきは彼女が言われたくないような顔をしていたのでとっさに偏食家だなんて言ったがおそらく間違いはないだろう。
普段使わないからこそ調味料もなかったし、買ったが入れ物に入れてシールとかを貼り忘れたのか砂糖と塩が分からなかったんだろう。
それに確信はないが彼女はもう1つ····
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