第8話
俺たちは今、学校にある大ホールで北条祭運営にあたっての注意事項などを受けていた。
前の方ではツインテールの少女が立ち上がって皆の視線を集めている。
「というわけで、各自来週までに出し物を決めて生徒会に資料を提出してください。
予算などの詳細は後で紙を渡しに行きますのでそれを見てください。
って事で稲葉会長、良いですか?」
会長と呼ばれた女の人はそれに頷き立ち上がる。
稲葉 凛、3年生で生徒会長を務める。
名前の通り、凛々しい性格とのこと···
「今年は例年以上に盛り上がり、来年はさらに盛り上がる。
そんな事をしている内に北条祭は日本の中でもかなり有名なお祭りとなった。
とはいえ、これはあくまで学祭だ。
学生としての本文を忘れないように存分に楽しめ」
「「はい!」」
ということで解散となり、俺は小鳥遊さんと共にクラスに帰ろうとしていた。
「それじゃあ帰ろうか、小鳥遊さん」
「そうですね」
「おい、律!お前は残れ」
「げっ、」
「ほう?生徒会長に対してそんな態度を取るわけだな?」
仕方ないんです。
条件反射です····
さて、帰るか!
「それじゃあ行こっか?小鳥遊さん、学校では迷わないと思うけどマンションで迷うくらいだから一緒に行こっか!」
「あの、それはありがたいんですが、流石に失礼では?それに、生徒会長に呼ばれてますよ?」
「気のせいじゃないかな?」
「気のせいじゃないぞ?」
そう言って首をガシッと掴まれる。
「たしか、君は小鳥遊白愛ちゃんだったよね?」
「そうですけど···?」
「悪いけどこの男は借りるよ」
「会長、最近自分、思うんですけど人権ってなんでしょうね」
最近、俺の選ぶ権利とかそういうのが侵害されまくってる気がするんですよ。
しかもそれを守ったり守らせたりする人達に···
「さて、白愛ちゃん、この男は借りるから君と一緒に帰れないんだ。ごめんね?ちなみにこの男の彼女とか言う訳じゃないよね?それなら考えなくもないけど···」
「いえ、彼女という訳では···」
「だ、そうだ。よし、手伝って貰うぞ、律」
「でも、秋山さんは嫌がってますし···」
「そうだそうだ!」
俺は嫌がっているんだぞ、だから首から手を離すんだ!
「あの!稲葉会長?早く生徒会室に行って書類を作らないと···」
「あ、ちょうど良かったよ。律、この子は結愛だ。今の副会長だな」
「ども、秋山律です」
「木下 結愛です。こちらこそ、よろしくお願いします」
「律には書類を作るのを手伝ってもらうから」
「あぁ、そうだったんですね。ありがとうございます」
見た目に反して、律儀な人だな。
俺からすればツインテールはお転婆なイメージが強い、というのもあの妹のせいだろうな···
「あれ?そこにいるのは小鳥遊さん?」
「はい?」
「あれ、小鳥遊さん知り合い?」
「いえ、私は知りませんけど?」
「私が一方的に知ってるだけですよ、竹下くんを振った生意気な1年生としてですけどね」
「生意気、ですか···私は別に彼の事を好きではなかったので振っただけですけど?」
「その上から目線なところが生意気って言われるんじゃないの?」
「上から目線?何言ってるんですか?貴方に魅力がなかっただけでしょう?私に責任を擦り付けないで下さいよ、先輩?」
「くっ、あんたね!」
およよ?これは····
「なぁ律、これは修羅場というやつでは!?」
「しぃー!そんな大きな声で言うな!」
「まさかこんな歳で出くわすとは!」
「いや、あんた生徒会長なら止めろよ!」
まったく、この人は昔から何も変わっていない、何が凛々しいだよ、この人が凛々しいとか言われる時は殆どボーッとしてるだけだろ····
「まぁ、確かにもっと見たい気持ちも無くはないが···」
「その気持ちしかないでしょ···」
「とにかく!生徒会室で話そうか!白愛ちゃんもどうせだし、おいで?」
小鳥遊さんを呼んだのはただ続きが見てみたいだけなんだろうな···
どうしてこんな人が生徒会長を務めているのだろうか···
俺と彼女は家族ぐるみで付き合いがあった為、昔はよく遊んだものだ。
正確に言えば遊んでたのは彼女と妹で俺は2人のおもちゃだったけどな。
「おい凛、あんまり迷惑かけるなよ?」
「君の方こそ彼女に迷惑をかけてないだろうね?」
「あ?そりゃどう意味で···」
「いや、気づいてないなら私が口出すことでもないだろう。
あ、それと学校では凛じゃなくて稲葉先輩とかで呼んでって言ったよね?お姉ちゃんでもいいけど」
「絶対嫌」
流石にそれは恥ずかしすぎるので俺は全力で拒否をする。
そして俺たちは生徒会室へと移動した。
「というか凛、なんで書記とかほかの人たちが居ないんだ?」
「だからお姉ちゃんと···」
「やだ」
「まぁいいか。で、なんで会長である私と副会長の結愛しかいないのかだったな、その答えは単純だ」
「凛が迷惑をかけて呆れられたか?」
「惜しいが違う」
惜しいってなんだよ
「正解は今日が火曜日だからだ」
「は?」
それのどこが惜しいんだよ、まったく関係ない上にまったく分からん。
「知ってるか律、生徒会にはなチャレンジャーと呼ばれる奴がいるんだよ」
「それって凛の事じゃなくてか?」
「······律はダメだが、白愛ちゃんはいつでも帰っていいからね?」
「え?あ、はい」
「おい、待てなんのことだ?」
すると奥の部屋に行っていた副会長が戻ってくる。
「用意出来ましたよ~」
そう言いながら副会長は俺たちの前にクッキーを置く。
しかしどうしたらクッキーが紫になる?
「どうぞ召し上がって下さい」
そう言われても金属の中に入れられて外には骸骨のシールでも貼ってありそうな物を軽々と口にしようとは思えない、それがいくら手作りであっても!!
見ろ!あの凛までもが言葉を失っている···
これはクッキーではなく物体Xだ、
「こ、これはまた何とも···」
「ちょっと···ね···」
「では頂きます」
「「へ?」」
その声がした方を見ると小鳥遊さんがその物体Xを口に運ぼうとしていた。
「ちょ、ちょっと待とうか小鳥遊さん!」
「そうだよ!白愛ちゃん知らないのかい?こういう時はメンズファーストってね」
んな言葉聞いたこともねぇよ!?
「そ、そうなんですか?では、秋山さんどうぞ」
え?うそ、信じた?やめて?俺が死ぬから
「なんでもいいから早く食べてくださいよ~時間が無いんですから」
くそ!こうなればヤケクソだ!
「よし、凛!2人で1緒に仲良く食べよう!」
「な、何を言ってるんだ?律!私は君に最初に食べる権利を与えてあげてるんだぞ!?」
「いらないわ、そんなの!!返却だ!」
凛と押し付けあっていると何故かこの部屋の温度が下がっていくような錯覚に陥る。
その寒気はどこから来てるのだろう···
「あのぉ、2人とも?さっきからすごく失礼ではないですかぁ?」
あぁ、どうしてなのだろう。どうして女性はそうも冷めきった目で人を見れるのだろうか···
仕方ない!ここは男として覚悟を決めて!
「美味しいですね」
これを言ったのは勿論、俺でもなければ凛でもない
「本当ですか?お世辞にしても嬉しいですよ?」
「それは良かった」
どうしてあなた達はそうも相手を煽る?
「それにしてもこの色的にチョコですか?」
「そんなの誰が見ても分かるじゃないですか」
え?いや?コレ見てもチョコだとは思わんが?紫色のチョコレートなんてあるのだろうか?
いや、まぁ作ろうと思えば今どき作れるんだろうがこんな、食欲を無くすような色をわざわざ作るとは考えづらい···
まぁ、いい。
小鳥遊さんが食べて平気だったなら俺にも平気だろう。
というかここで逃げ出したら男が廃る気がする。
だから、俺と凛は目配せをして頷く。
「「頂きます!!」」
そして、生徒会室には死体が2つ出来上がったとさ
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