幻日言語

小泉毬藻

スラム

かつて彼女はスラムの女王だった。

今はクスリに捕らわれ、売人に飼われている。

四六時中、幻覚に溺れて、指先から腐っている。


腐った指先に、売人は種を蒔く。

血肉と幻を糧として、彼女から咲いた花を、売人の娘は摘み取って売る。

路地裏のうすくらがりで、ひそかに。

腐臭と花のにおいが、有機的な色彩を伴って、路地にあふれる。


夕立のあとのもやにまじって町は宵とまぼろしにのまれる

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