第10話 311年11月 ギヨー紛争
その1 対ギヨー戦略
<前回までのあらすじ>
シェラ一行とカンファ公子はラガム海賊衆の若き長ケイゴの訪問を受け、デュアリアス地方北端のドーズ連合公国を訪れた。
この外交訪問を逆手に取り、ドーズの反改革勢力はクーデターを目論む。
一行はケイゴや黒ドーズ公ヴィクトリアと協力してクーデターを鎮圧し、ドーズとの間に友好通商条約を締結。
シェラの眼は、デュアリアス西部の唯一の海港都市、ギヨーに向けられた。
【シェラルデナ(シェラ)】(PC、人間/女/17歳):祖国ハーグストン王国再興を夢見る姫剣士。旧臣と祖国再興に向け動き出した。
【パテット】(PC、グラスランナー/男/48歳):流浪の
【サンディ】(PC、エルフ/女/41歳):ガンマンに憧れる
【ジューグ】(PC/GM兼務、リカント/男/17歳):キルヒアの神官戦士。重度のシスコンだが、最近はシェラが気になる様子。
【ケイト】(支援NPC、ナイトメア/女/20歳):キルヒア神官にして
【ノエル・ディクソン】(人間/女/15歳):ハーグストン王国最後の騎士を名乗る少女でベルミア衆の一人。シェラに忠誠を誓う。
【クラミド】(ディアボロ/女/25歳):魔将ディロフォスの娘だったが、戦う能力がないため父に勘当された。シェラに仕えて学問で才を開花させる。
【カンファ・シェルシアス】(人間/男/16歳):シェルシアス公国第三公子。シトラス総督を務める。
【フリーシア・サストレー】(ミノタウロスウィークリング/女/24歳):元シトラス軍“鉄騎”でディロンの養女。現在はカンファに仕える。
【ディロン・シェザール・グアンロン】(ドレイク(ブロークン)/男/90歳):元シトラス軍“天騎”。ドロメオ男爵。めんどくさいツンデレ。
【トゥリア・リオデバ】(ナーガ/女/329歳):プラトー領主。南部の蛮族勢力に圧迫を受けている。ディロンとはいい仲の様子。
【ケイゴ・ラガム】(シャドウ/男/18歳):ラガム海賊衆第十六代頭領。海賊の在り方を変えようとしている。
【ヴィクトリア・ドーズ】(人間/女/20歳):“ドーズの鬼姫”と恐れられる黒ドーズ公。ケイゴとは夫婦漫才を繰り広げる仲。
【トゥンガラ】(リザードマン/男/自称永遠の17歳):ギヨーの海賊親分。おっさん呼ばわりすると怒る。
―改めてデュアリアス地方の概略を紹介します。やはり挿絵機能が欲しいのです……―
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・西部地域
A:ギヨー……西部唯一の海港都市。バルバロス有力者による分割統治。
B:プラトー……ディロンの盟友トゥリアの領地。
C:サピロス……宝石鉱山をいくつも保有する。
D:ジアム……大きな闘技場がある。ルーンフォークの生産地でもある。
E:ドミナ……灌漑農業を営む。アズダール配下。
F:ジュラ……享楽の都。アズダール配下。
G:ザバ……インキュバス族アズダールの本拠地。
H:ダイナー公国……人族領。
・東部地域
J:ドーズ連合公国……人族領。
ラ:ラガム群島……人族領。ドーズに従属するラガム海賊衆根拠地。
K:西デューラ地域……小規模なバルバロス所領が割拠。
L:メイザース藩王国……オーガが指導者の多種族バルバロス国家。
M:キュリアス低地……小規模なバルバロス所領が割拠。メイザースに従属。
「サンディ、ケイト。通話のピアスを渡しておくぞ」
シェラは前回の反省(連絡手段抜きの別行動)を踏まえてか、通話のピアスホルダーと通話のピアスを2セット購入した。(パテットからは逆にピアスの片方を預かった)
すでにジューグとシェラ、ジューグとケイト間に通話のピアスはあるが、時間制限はあるし、万一に備え複数系統を確保しておくに越したことはない。
「それと、ジューグにはこれだ!」
ジューグは渡されたものを見てどきりとした。『相互フォローの耳飾り』である。
「お、おう」
その程度の反応しかできない愚弟を見て、肩をすくめるケイト。
「それで……あのオッサン起点にギヨーどうにかするプランじゃなかったっけ」
「だれがおっさんだ」
サンディにオッサン扱いされて眉間にしわを寄せているのは、リザードマンキャプテンのトゥンガラ。ギヨー市の(元)有力者である。
311年11月。シェラ一行とカンファ公子は関係者(ディロンやケイゴ、ヴィクトリア)を招集してシトラス市にて対策会議を行った。
シェラにギヨーの内情説明を求められ、トゥンガラが話し出す。
「ギヨーを単体で支配するボスはいない。有力者が5名いてな、そいつらのことはギヨー5と呼ばれてる」
「ギヨーファイブ……」
シェラはキメポーズをとる5名のバルバロスを脳裏に浮かべた。
「何その採石場でポーズ決めてガソリン燃やしそうな連中」
「あれてっきり火薬爆発させてるのかと思ってたけどガソリン燃やしてるだけだったちゅんね」
―五人衆とかでバルバロスを『人』とカウントするのに違和感が!五領主とか五頭領とか五旗とかそういう表現でもよかったかもですね。―
「んで、他の4名だが……」
トゥンガラはお手製のギヨーの地図に指を滑らせた。
ギルマンディーヴァのルナラータ:宝飾ギルドを経営してる、光り物が大好きな女。当然、宝石鉱山の多いサピロスと結びつきが強い。
アルボルエルダーのスコヴィル:トゥンガラ同様海賊を率いる。半分商人的な側面もある。
バジリスクのリオ・アリバ:カジノを経営している女。
ここまで喋ると、トゥンガラはいったん口を閉じる。
「最後の1名は?」
ジューグが問うと、トゥンガラは腕組みをして答えた。
「つい先日、シトラスから逃げてきた残党がギヨー5の一つを倒して取って代わった。カーク・クリオロフォスっていう若手のディアボロだ」
「ほう、カークか」
ディロンは感慨深げに言った。どうやら、面識があるらしい。
「流石に厳しい世界だな」
「わー、また面倒なのがやってきちゃったねえ……まさかそいつを中心にギヨーが纏まりつつあるとか言わないよね?」
「シトラス残党からしたらうちらは仇敵だねぇ」
シェラが弱肉強食の過酷さに感じ入っている横で、パテットとサンディはむしろ現実的な問題を論じる。
「カークはどこにいるんだ?」
「今はダルクレム神殿だな」
「こちらの、ブンブの屋敷というのは?」
「ああ、サピロスの鉱山主だ。近頃は実務は娘に任せてこっちに滞在してるようだな」
と、そこに。
「失礼する」
「失礼します」
入ってきた男女は現地のレジスタンス黒獅子党の一員、スウィフトとアズダール一派のドリグナ配下だったルーンフォークのリーダー、ジュリエット。プラトーを巡る紛争の中で、二人とも成り行きでシェラの下についた。
「我々もギヨーの様子を探っていたんだが……」
スウィフトは難しい顔をした。
「どうも、内乱が近づいてるみたいだね」
「そちらの彼の一派が没落しまして」
ジュリエットはトゥンガラに顎をしゃくる。
「あー、そうなったか」
トゥンガラは帽子を押さえる。
「まあ、ボコられて拉致られちゃあそうなるわね」
「ちょっと悪いことしたかな」
これが実行犯の一味であるサンディとパテットのセリフである。
「回収できないものか?」
シェラはトゥンガラに訊いた。
「だったら他の派閥もボコればいいだろ!」
わりと脳筋なサンディ。
「リザードマンの生き残りは砦にとどまっているようです」
「なら、そこを拠点として利用できそうだな」
ジューグは地図上のトゥンガラの砦に視線を向けた。
「南方の蛮族もこれを機に介入の動きを見せているようだ」
スウィフトは一同を見回した。
「我々としてもギヨーは抑えたい」
腕組みをしてデュアリアスの地図を眺めるシェラ。西部はもちろんのこと、ドーズを始めとする東部との交易との中継点としても重要な街だ。
「この街の重要度を鑑みれば、ぜひともベルミアの行政下に置きたい。ただ、有力者たちにも同様に益を
「プラトーはどうするつもりなのさね」
サンディはディロンをちらりと見た。
「むろん、南のアズダールの勢力伸長は阻止したい」
と断言して「……だろう」と付け加えるディロン。
「内乱の各派が周辺諸国を味方に引き入れようとそこらじゅうを巻き込んで結果世界大戦にって割とありそうで怖いなあ」
「ギヨーの火薬庫ちゅんね」
「火薬庫か……」
スウィフト曰く、100年ほど前にギヨーは一度全焼したという。
いきなり軍事介入すれば有力者をすべて敵に回しかねない。とはいえ、必要とあらば迅速に軍を送らなくてはならない。
そこで、カンファのシトラス領シェルシアス軍およびディロンのドロメオ領軍をプラトーまで陸路で前進させることにした。こちらにはサンディとパテット、ケイトたちが同行する。
一方、シェラはジューグ、ノエル、トゥンガラらと共に海路で直接ギヨーに乗り込むことにした。
「……とゆーわけでギヨー落とすよ」
プラトーにて。出迎えたトゥリアに向かって開口一番にサンディが言った。
「そうか。航路が使えれば、こちらもかなり楽になる」
「ところで、あれって高炉?」
パテットが、前回来た時には無かった施設を指さした。
「そーだよー」
声の主はクラミドだった。
「ようやく炉が動き出したとこなんだー」
「ありゃ、まだここにいたの?」
サンディは目を丸くした。
「せっかく殿下が鉄鉱山を見つけてくれたしねー」
石炭と鉄鉱石が揃ったため、鋼鉄の製造技術を確立させるべく寝食を惜しんでいたそうだ。
「あぁ……それでさ。ギヨーでシトラス残党率いてるディアボロがいるらしいけど知ってたりする?」
「ふぇ?」
クラミドが間抜けな声を上げる。
「カーク・クリオロフォスだ。知らない仲ではないだろう」
ディロンが補足する。
「へー、カークちゃんなんだー。すごいねー」
ポケポケとした声でのほほんと話す。全くディアボロらしくない。
「なんだ、知り合い?」
「いとこだったかな?僕の出来が良くなかったから、父さんの後を継ぐのはカークちゃんだろうってよく言われてたよ」
「ふうん……まぁどっちでもいいや」
サンディがクラミドの両肩をがし、と抑えた。
「知り合いなら一緒に来い」
「ふぇ……?僕、役に立たないと思うよ?」
「説得するきっかけがありゃいーの」
「蛮族に血縁の情ってどこまで通じるのかなあ」
パテットは首をかしげる。
まあ、ゴブリンなどの多くの妖魔(コボルド除く)ではほぼ無意味だが、ドレイクやディアボロといった上級蛮族にはそれなりの情や家族愛というものはある。
もっとも、人族ほどではないが。
(つづく)
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