内通者Ⅰ

アルベルトから渡された地図通りに進むと大きな建物が佇んでいた。

正門には見張りが二人たち、裏門へも回ると見張りは一人もいなかった。

「久嗣、入らないの?」

「明らかに罠だろ。これは」

「罠だろうと関係ないわ。行くしかないでしょ。それとも久嗣、あんたには私達も思いつかない侵入方法があるの?」

「いや、無い」

作戦通り裏門から建物へ侵入すると案の定、待ち伏せしていた伏兵が襲いかかる。

「久嗣様、ここは私にお任せ下さい。久嗣様とリリスさんは目的を優先してください」

沙耶音が二人の前に出るとナイフを取り出した。

「全員かかれ!!容赦なく殺せ!」

その掛け声で一気に襲いかかってきた。

「私を女だからとか久嗣様の従者だからとかって舐めているのなら勘違いも甚だしいです」

襲いかかってきた男達が一瞬で倒れた。

しかしそれでもまだ奥から襲いかかってくる。

「かかれ!!」

「はぁはぁ、キリがないですね。ていうか、本来であれば久嗣様の隣にいるべきは私じゃないですかっ!!」

沙耶音が愚痴を零しながら襲ってくる敵を倒す。

「そんな小娘相手になにを手間取ってやがる」

天井が崩れ、敵を下敷きにしていく。

その上から2mはある身長の強面顔の大男が降りてくる。

「何者ですか」

「この俺は轟蓮摩を超える男、巌流黒虎だ。小娘、お前の名は?」

「私は睦月久嗣様の従者であり懐刀、沙耶音です」

「そうか、この人数をよく倒した。お前の力に称し俺が直々に葬ってやろう」

「なんて気迫、、、分かりました。私も全力であなたを迎え撃ちます!」

「「"霊装"起動!!」」

沙耶音は二振りの小太刀を握りしめ、黒虎は3mはある大剣を手に取る。

「いざ尋常に参る!」

二人の刃が何度も交わり、火花が散る。

「その程度か!!」

黒虎は大剣を大きく振りかざし、沙耶音へと叩きつける。

「くっ、、まだです!私こそが久嗣様の隣に立つんです!!如月流小太刀"双龍円舞"!!」

踊るように沙耶音が龍の如く黒虎へ剣戟を放つが黒虎はそれを難なく弾き返す。

「やるではないか!」

黒虎は戦いを楽しんでいるかのように笑顔である。

一方沙耶音は苦痛に歪む。

「はぁはぁ、なんて馬鹿力、、一振一振が重く繊細、、異常な反射速度」

沙耶音は黒虎の攻撃を躱すことに全力で反撃することが出来ない。

「さっきまでの勢いはどうした!!」

「ここは逃げるしか!」

突き当たりを曲がり、たまたま空いていた部屋へ隠れる。

「どうした!小娘!つまらんぞ!。まさかとは思うが逃げようなどとは思っていないだろうな!ふむ、、そうか、所詮お前もお前の主人も逃げることしか出来ない貧弱者という訳か!」

「誰が貧弱者と?私を侮辱することは許しますが久嗣様を侮辱することは決して許しはしません!!」

沙耶音が黒虎へ襲いかかるが簡単にそれを払い除けた。

「そうこなくてはな。本当に小娘の主が貧弱者では無いというのならこの俺に勝って証明して見せよ!!」

黒虎は大剣を沙耶音へ向けた。

「いいでしょう。久嗣様を愚弄したことをたっぷり後悔させて差し上げます!」

沙耶音も小太刀を構え、黒虎を睨みつけた。




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