サイレント

杉並冬寺(kasai012)

サイレントⅠ

【一章】

バサッ。私は今日、土曜日なのに月曜日だと思っていた。時計を見たら今日は土曜。無駄に早起きしてしまった。ただ、そんなことよりも驚いた。目の前に紙がある。

『音を立てれば即死亡』

意味が分からない。どういうこと?でも死ぬのは嫌だ。だって死ぬくらいならゴキブリに囲まれるほうが、、、いや、そっちのほうが嫌だ。でも、とりあえず家を探索しないと意味ないか。そーっと、ドアを開けようとした。でも、鍵がかかっている。部屋を探らないとか。そんな風に思ってタンスをあさる。でも何も見当たらない。布団を探しても、鏡の裏も、机の下も、何もない。ただ、一つだけ探してない場所、あるんじゃないの?そう思って、ひたすらに考えた。私の宝箱。そこ、、、まだ探してないよね。そーっと開ける。すると中には、幼い頃、四人で遊んだ写真と、見慣れない鍵があった。きっとこの鍵がドアの鍵なんだろう。早く出たい、みんなに会いたい。ドアを開けた。よしっ。探索しようか。足を部屋の外に踏み入れようとした。踏み込むと同時に、私は倒れてしまった。そして、眠ってしまった。

【二章】

あー。寝すぎたか。って、今日月曜日じゃなかったっけか。まあいいや、てか、それよりこれ、なんだよ。

『音を立てれば即死亡』

これは夢か?いてっ。夢じゃない。はぁ?誰だこんないたずらしたの。秀華はまずない。あいつとは一年間話してないし。秋秀の野郎もないな。そもそも俺の部屋知ってたっけか。紗里はこういうことしないからまずないな。じゃあ誰が、、、親はこのあたりに住んでないし、鍵も渡してないからない。もういいや、とりあえず家みてみっか。俺はあらゆるところを探し、部屋から出てほかのところを探そうとしたら、ドアに鍵がかかっている。どういうことだ?さっき幼いころの写真見たけど、秀華、どんな感じになったんだろう。あれから一年間。部屋出たら会いに行ってみるか。そんなことを考えていたら、いきなり倒れてしまった。眠気が襲う。俺はそのまま寝てしまった。

【三章】

バサッ。なーんだ、夢か。って、、、言ってられない。ループしてる。またあの紙。でも、少し違うような。

『物音を立てずに最上階へ行け。チャレンジャー禍室響也と一緒に』

響也!?私と響也は、一年間疎遠になってしまっていた。私は響也といち早く会いたいという気持ちを抑え、メッセージを開いた。連絡先から、、、あ、い、え、お、か、禍室、、、あった!私は、禍室響也とのメッセージを開いた。そしてメッセージを開始した。

「おーい響也―。」

「秀華!紙、見たか?」

「うん、それより、今度は最上階に行くんだってね。部屋から出るだけじゃなくて。」

「は?何言ってんだよ。今度はって。」

「あれ?響也は覚えてないんだ。それとも、知らないだけなのかな。」

「もしかして、この前に何かこれに似通ったものがあったのか?」

「うん。さっきのはね、『音を立てれば即死亡』っていう紙で、部屋から出たら今度は紙が変わったの。」

「なるほどな、そういうことか。ところで、秀華は七階だよな。」

「うん。響也は五階だよね。じゃあ待ち合わせ場所は、、、」

「うん。六階だな。」

「分かった。音をたてないようにね。」

「ああ、分かってる。秀華もだぞ。」

「じゃあメッセージいったん終わるね。」

そう言ってメッセージを閉じ。部屋を出た。音をたてないように、そーっと、ドアを開けて、部屋を出る。家の鍵を持ったら、靴を履いて、ドアを開ける。そこにはいつも通りの廊下がある。電気が、パッ。パー。パー。パー。パー。パチン。パー。パー。パー。パー。パー。パチン。パー。パッ。パー。パッ。パー。パチン。パッ。パッ。ってなってる。こんなのいちいち見てる人なんているわけないけど、恐怖を紛らわすためにはこれしかなかった。あー、響也に昔、モールス信号の仕組み教えてもらったなー。1,0,k、、、い。ふふっ。今でもモールス信号、読めるんだ、これも響也のおかげだなー。そんな風に思っていたら、もう階段のところまで来ちゃった。そこで、メッセージが来た。それを見て私はぎょっとした。

『音、立てると、来る。ヤバイ奴、来る』

そこでメッセージは途切れた。私は恐怖のあまり叫びそうになった。とっさに、最上階。九階に行こうと、エレベーターに乗った。私は、目の前に二つのものが見えた。一つは、血の付いたナイフを持っている悪魔。もう一つは、『十階』のボタン。ここは九階建て。何で、廊下での光景がよぎる。モールス信号の、、、あ!読めなかったやつ。分かった。

『1,0,か、い。』

十階!そういうこと、、、なら、このマンション全体が、謎?そこで私の視界は暗転した。

【四章】

俺は、秀華と合流するために部屋を出て、家を出た。廊下を歩いていると、電気が点滅している。上ばっか見ていて足元を見ていなかった。俺は少しつまずき、スマホを落としてしまった。やばい!そう思うときには、目の前に奴はいた。俺はすぐさま秀華メッセージを送った。慌てて、単語口調になったが、何とか伝えることができた。さて、俺の記憶はここで途絶えた。秀華、叫ぶなよ、行けよ、最上階。十階に。あの電機の点滅。十を指してた。多分そういうことだろう。

【五章】

バサッ。またか、紙は同じ。多分私は死んだ。十階。増えてる。あ、そうだ、メッセージをっと。

「響也、さっきのことは覚えてる?」

「ああ、鮮明に。電気がモールス信号の十を指してた。多分十階がある。」

「うん。それは私も分かったの。で、エレベーターに、十階のボタン、あったよ。」

「やはりか、でも階段で行かないとエレベーターの駆動音で気づかれる。俺が七階まで行く。階段で待ってろ。」

「うん。分かった。気を付けてね。一度切るよ。」

「ああ、またな。」

私はホッとした。多分あのまま私が行っても、何の収穫もなく、響也に迷惑をかけるだけだもん。それにしても、響也はほんとすごいな、改めて感心しちゃった。さ、階段まで行くぞ。私はそーっと、部屋を出た。

俺は、メッセージを閉じた後、ゆっくり部屋を出た。そして廊下に出て、そっと一歩一歩前に進む。電機は相変わらず点滅している。これは何回まであるんだ?点滅の意味は階のほうの意味だが、もしこれで終わらないなら、秀華の言うとおりだったら、どれくらい続くんだろうか。秋秀や、紗里はどうなっているのか。このマンションはどうなっているのか、まだまだ全然分からないことだらけだ。はぁ。もう階段だ。丁寧に、丁寧に。一段ずつ、ゆっくりと進む。六階、踊り場、七階。ついに来た。

私は、廊下に出た後、壁を伝って、一歩一歩、ゆっくり進む。706、705、704、、、702、701。よし、遂に階段までこれた。その後すぐして、響也が下からやってきた。会釈だけで、あとはメッセージを使って少しだけ話した。

「俺、いいこと思いついた。」

「なに?どんなこと?」

「それはな、緊急時に使うから、まだ言えない。」

「例えば、どんな時?」

「んー。悪魔に会った時とか。」

「え、縁起でもないこと言わないでよ。悪魔は音を立てなきゃ来ないでしょ。」

「いや、俺が死ぬ前、実は、奴が歩いてるの、見たんだ。」

「え、それって、、、」

「悪魔は、マンション内を歩き回っている。

だからいつ会ってもおかしくない。」

「分かった。気を付ける。じゃあ行こう。」

「ああ、そうだな。行こう。」

私はゾッとした。マンションの中を歩き回ってるなんて、会ったらどうしよう。

俺は、秀華の震えてる姿に微笑んでやった。それに、あいつ、カラスみたいだし、光に弱いんじゃないかと思って、スマホの光で追い払えると考えた。万が一悪魔に会ったら、俺がスマホで追い払う。もう八階だ。しばらくすると、黒っぽい影が見えた。俺は小声で、

「秀華、お前、今九階だから、走って十階行け。おれ、探し物あるから。」

と言った。秀華は頷き走り出した。俺は迫りくる陰にスマホのフラッシュを当て、奴を追い払おうとした。どうやら効果絶大。十階にたどり着いた秀華を見て俺はそっちのほうへやった。すると十階につく寸前で、倒れてしまった。そのまま俺は秀華に笑いかけると、走って秀華のもとへ行った。

十階に二人で行くと、そこにあったのは一枚の新聞だった。私はぎょっとした。

『音を立てるな』

そこには未来のこの地域が写っていて、悪魔で埋め尽くされている。生存者には、、、

「ここ、見て。生存者。」

「えっと?禍室響也。俺か。」

「その横、禍室秀華。私。でも、片成じゃない。多分未来の私たち、結婚してる。」

「え?」

「そ、それより、横だ、横。横を見ようぜ、って、田辺秋秀、、、秋秀も、か。」

「秋秀くん、、、」

「「うっ!」」

二人して、眠気が襲って、眠ってしまった。

【六章】

バサッ。今度の紙は、

『音を立てずに三人で脱出しろ』

か、三人はどうせ二人と秋秀のことでしょ。私はメッセージを開きグループを作った。そこに招待したのは、響也と秋秀。案の定入ってくれた。そしてメッセージを開始する。

「もしかして、秋秀も、ループしてる?」

「ああ、お前らもか、びっくりしたよ。」

「お、秋秀、久しぶり。秀華、さっきぶりだね。」

「うん。私達は一緒にいろいろやってたんだよ、それで、今回は秋秀もってことだね。」

「なるほど、今回が三回目、だよな。」

「へー。そこは俺たちと同じなんだ。」

「それなら、今回は響也の部屋に集合でいいかな。」

「それでいいだろ。」

「了解、待ってていいんだな?」

「うん!じゃあ切るね。」

「ああ。」「OK。」

私はメッセージを閉じると、部屋を出て、廊下に出た。そろりそろりと歩いて、壁をうまく使って、ゆっくり、ゆっくり、一歩一歩、慎重に歩いて行く。階段まで。階段まで来たら、今度は段差を一つずつ、丁寧に降りていく。いざとなればフラッシュを使う。もうそんな怖くない。六階、踊り場、五階。ようやく着いた。響也の部屋は、508。奥のほうの部屋。また廊下をそろりそろりと、一歩一歩、丁寧に、慎重に、ゆっくりと、歩いて、508の前まで来た。そして部屋の中に入る。するとそこには、うれしそうな顔の響也が居る。互いに笑い合って、喜びを分かち合った。それから少し経つと、秋秀も来た。そこには紗里もいた。四人集まったから、そろそろ行こう。みんなで目を合わせ、廊下に出てみんなそーっと、そーっと、一歩一歩、ずっと一緒に遊んでた四人で、響也と少し目が合って

微笑み合った。電気が示してるのは、、、そんな毎回ではないか。階段が見えてきた。よし、ついにここまで来た。みんなでうなずきあって、階段を降りていく。四階、三階、二階。ここまで来た。と、その時、紗里がつまずいて、音を立ててしまう。「しまった!」という顔をしている。スマホを用意したが、フラッシュのやり方が分からなくて戸惑っている。響也は、やばいという顔のまま、固まってしまっている。皆、恐怖のあまり何もできなくなってしまった。ああ、どうしよう。こういう時に焦っちゃダメだって、私が一番知ってるはずなのに。

俺、ちゃんとしろ、フラッシュ、フラッシュ。俺は、スマホを持てなかった。手汗がすごい。こんなに緊張するなんて、思ってもいなかった。テンパるばかりで、何にもできない。俺は秀華を守らないと行けないのに。何で、何で、俺は自信がなくなるんだ、立ち上がれ、立ち上がらないと、ダメだ。よし、過程を大事にして、まず、スマホを持つ。次にスマホを開く。そしてカメラを開いて、フラッシュ。ピカッ!よし、できた。これを前に、、、これが、出来ない。なんで、何でできないんだ。もう一度。スマホを持つ、スマホを開く、カメラを開く、フラッシュを出しといて、前に向ける。あ、あー、もう。フラッシュを押せない。まだまだ!もう少しで、行ける。スマホ開く、カメラ開く、ふ、フラッシュを、お、おお、お、、、す、、、だめ、だ。俺の視界は暗転した。

響也が大変!なにか、何かしてあげられることは、、、何もできない。音を立ててはいけないし、見つからないし、響也は自信を無くしてる。私がしてあげれること。あれを見て、あれをマネしてフラッシュを押すこと。よし、やるぞ。スマホを持って、開いて、カメラを開く。そしてフラッシュ、、、フラッシュってどこだろう。この位置に何となく、、、違う。ここか?違う。どこだろう。ないよ。どうしたらいいの?そう思ったとき、目の前が真っ暗になった。殺された。悪魔に。

【七章】

バサッ。やっぱり。死ぬ度にループする。とりあえず皆が記憶はあるか確かめないといけない。まずメッセージでグループを作ろう。そしてそこに、、、あれ、響也から何か来てる。

『謎が解けた。グループでは話すなよ。』

「うん。で、なに?返信遅れてごめん。」

「あ、やっと起きたか、それで、その謎ってのが、紗里のことだ。紗里の奴、たぶん黒幕だぞ。今回も紗里と行く。それで紗里が何かしでかしたら即ビンゴ。次のループでは紗里と行動しない。」

「どういうこと?たまたまかもしれないよ?え、分かんない。整理がつかない。」

「まあそうだろうな、ただ、あの新聞。思い出してみろよ。生存者に書いてあったのは?誰と誰と誰?」

「えーっと、私と、響也と、秋秀、、、あ!」

「気づいたか?紗里の名前がないんだ。とすると、あの紙の三人は紗里以外の三人だ。」

「うん。分かった。グループでは話さないようにするね。」

「じゃあグループ作ってくれ。よろしく頼むぞ。」

紗里が黒幕、、、実感がわかない。あ、そうだ、グループ作んなきゃ。私はメッセージのグループ作成からグループを作り、二人を誘った。

「さっきぶり、皆。」

「秀華、秋秀。記憶はあるんだな?」

「ああ、ばっちりだ。秀華もだよな。」

「うん!じゃあ今回も沙里と一緒に行く?」

「ああ、そうしよう。そうすれば四人で行けるしな。」

「了解。じゃあ今回も響也の部屋集合で。」

「OK!」

「待ってていいんだよな?それじゃあまた後で。」

私はメッセージを閉じた。もし紗里が黒幕じゃなければ秋秀が黒幕。もしくは両方黒幕で別の秋秀がいる?いいや、そんな現実味のない話、、、あるかもしれない。もともと今この状況が現実じゃないんだから。私はそんなことを考えながら、のそのそと部屋を歩き、廊下に出た。何ら変わりない風景。いつも通りだ。いいや、一つ違うとするなら、音を立ててはいけないということ。これがなければいつもと同じ。エレベーターを過ぎると、後はもう少しで階段だ。少しずつ、一歩一歩進んで、もう701に来た。そしてそこには階段がある。ここまで来れば大丈夫。あとは階段を下りるだけ。六階、五階。そこには響也の姿があった。少しでも歩く距離を縮めるため、来てくれたのだろう。私は少しホッとした。その後すぐに、秋秀と紗里も来た。

俺にできること、悪魔に会っても、俺は何もできなかった。むしろ秀華に迷惑をかけるだけだった。なら、あらかじめ階段の前で待っていること。よし、やろう。俺は虫の声すら聞こえないような廊下に、自らを無にして、ゆっくりと歩いて行く。壁を使い、つま先を使い、静かに、音を立てずに。505を過ぎ、504、503、502、501、来たぞ。階段前に。情報を整理する。たぶんあの秋秀も黒幕だ。だって、紗里が黒幕なら、紗里と一緒に来た秋秀もおかしい。なら、あの三人って、どの三人だ?はたまた、三人ってのは嘘か?あー、もう、混乱してどうすればいいかわからない。そんな風に考えていたら、秀華が降りてきた。秀華の後すぐ、秋秀と紗里が来た。要注意人物トップ2。気を付けよう。

、、、そろそろ二階といったところで、やはり、紗里がしでかした。今度はあいつが秀華にぶつかってきた。とっさに秀華の肩を抱いてカバーした。もうこれで決定した。秀華とうなずき合うと、軽く足を速めた。もちろん二人もついてきてるが、もうすぐエントランスだ。上から気配がする。もちろん悪魔だ。でも俺は無視して走った。秀華の手を引いて。ただ、その走りの頑張りを踏みにじるかのように、悪魔は追ってくる。フラッシュを使うしかない。そう思った時、、、

私は、響也とうなずき合うと、響也についていく形で早歩きになった。足音は、、、少し立てちゃったかな?それを察知されたかのように悪魔は上からやってくる。一階に着いたころ、響也に手を引かれて、走る、少し走る。悪魔に追いつかれないように。もう、あれを使うしかないよね。フラッシュ。あれさえ使えれば、うん。やるしかない。私は、スマホのカメラを開き、あてずっぽうでボタンを押した。すると、ピカッとフラッシュが起動した。それを悪魔に向けてもう一度したら、悪魔は追うのをやめた。やった。やれたんだ。響也のためにできること、私のできること。すると、響也はより一層走るのを速め、マンションを出た。すると、そこにいたのは!

俺がフラッシュを起動する前に、秀華が、緊急時フラッシュを押した。普通のフラッシュじゃなくて、写真以外の時に一度できるフラッシュ。正式名称は知らないけど、最近のスマホはすごい。こんなものまであるし、携帯電話なんかと比べ物にならない情報量と機能性を持っている。ま、こんな使い道するのも、今だけだけど。マンションを出た。ようやくだ。俺は信じられないものを見た。マンションの外で。

私達が出たところにいたのは、秋秀。中で悪魔に殺されたはずの。

「何で秋秀がいんの?」

「ほんとだよ、お前、中にいたんじゃなかったのか?」

「えっと、多分それは偽物。僕も君たちの偽物、見てきたから。それに、多分これは君たちが中心なんだよ。」

「どういうこと?」

「幼いころにみんなで遊んだろ?あの時、最初は三人で遊んでて、その後俺が来たろ?あの時のこと思い出せばわかるよ。何であれが現実になってるかわからないけど。」

「あの写真の日、、、か。」

【八章】

あの時、私と、響也と、紗里で、音を立てちゃダメだよっていう『サイレントゲーム』をしてた。紗里がちょうど持ってたハロウィンの仮装の『カラスの悪魔』を着て、鬼になった。当時小学生だった私達は、地域の大きなジャングルジムと、段ボールハウスが組み合わさってたとこでリアル鬼ごっこができた。それに音を出しちゃダメというルールを付け足して遊んだ。その時のノートに、

『1、段ボールハウスの扉を開ける』

『2、ジャングルジムの一番上に行く』

『3、段ボールマンションから三人で脱出』

と書いてある。『3』では、秋秀も来て参加したけど、出れたのは私と響也の二人だけ。それで、いつかまた四人でやろうねって約束した。

私はピンときた。

「あ!、そういうことか!あの時と内容が似てる。でも、なんでそれが今、、、」

「それは俺も思った。そもそも最後の奴で紗里は何で出てきたんだ?」

「僕はそこらへん、よく分からないけど、それが本当なら、これで終われるよね。」

「そうだね、、、って、あれ何?」

空から一枚の新聞が降ってきた。

「え、、、あれって、二個目の奴で見た新聞だよね?」

「だな、って、なんか破れてくぞ?」

「粉々だね、あれ?ここだけ残ってない?」

「ほんとだ、『禍室響也、禍室秀華』って、

え、、、」

響也と私の頬が染まる。胸が熱くなる。

「あ、お二人さんでカップル成立パターンか、なかなかにいい終わり方じゃん。あ、うっ。頭が痛い。眠気が、、、する。」

「本当だ、私も、眠い。響也、また後で。」

「ああ、俺も眠いこれで戻れればいいけどな。終わってくれと願うしかない。」

私達は眠気に襲われ、眠ってしまった。

【九章】

バサッ。まだ終わってなかったの?あれ?違うな。紙になんて書いてある?

『バージョン2にチャレンジする際は、この紙にサインをしてください。(注、片成秀華さんの紙からプレイ可能です。)

・郡山紗里

・田辺秋秀

・禍室響也

・片成秀華

        様宛         』

どういうことだろう、プレイ?チャレンジ?って、もう六時半!学校行かなきゃ。やっぱ現実は月曜日だったし!もー。私は急いで支度をして、大急ぎでマンションを出た。するとそこには響也と秋秀もいた。

「おはよ!」

「おはよ、てか、秀華のとこに紙、あった?俺のとこにも秋秀のとこにも秀華のから行けとか書いてあったけど。」

「あったよ。どうする?いつやる?ていうかやる?」

「やるに決まってんじゃん。バージョン2があるならやらない手はない!僕はやる!そう言えば会わなかったけど、別のとこで、紗里もループしてたらしいよ。紗里もあるならやるって言ってたし、響也もやるんだろ?」

「ああ、チャレンジするに越したことはないしな。俺は秀華がいいっていうならやる。」

「私は別にいいから。やるでいいね。」

「了解。」「OK!」

もう学校の門の前まで来た。今の時間は、えーっと、七時一分!間に合った。あれ?秋秀がもう行っちゃった。行かなきゃ。

「おい、待て。言いたいことがある。」

「え?何?」

「いや、こんなことがあったばかりで、気持ちの整理がついてないんじゃないかと思って、今の気持ちが聞きたい」

「えーっと、まだ少し不安かな。こんなこと、初めてだし。」

「そ、そっか、んー。俺も正直不安だが、秀華がそんなじゃ嫌だな。俺は。」

「ありがとね。心配してくれて、あ、あと、『サイレント』、支えてくれてありがと。」

「いや、お、俺は、秀華を守りたかったけど、最後に勇気出せなかったし、恩があるのはこっちのほうだよ。そして支えたいのは、今もだ、、、俺と、つ、付き合って、、、ほしい。秀華を支えたい。何か秀華のためになることがしたい、、、あ、こ、こんなこと、一年前、疎遠になった奴に言うことじゃないな。悪かっ、、、」

「え?いいの?私は大歓迎だけど。」

「え?あ、ありがとう。これからもよろしくな。次の『サイレント』も、秀華のこと支えるから。改めて、よろしく。」

「こちらこそ、これからも、よろしく。もちろん、ずっと。私だって、響也のこと支えたいから。よろしく。互いに支えあって頑張ろう!」

「ああ。」

頬が赤くなっていくのが分かった。急に告白なんて、響也らしくもないことを。ま、たまにはこういうのもいいね!私の心は、曇ってたとこから、一気に晴れた。心のバクバクが、テンポよく、いや、もっと速く、規則的に波打つ。心の波は、止まらなかった。私の不思議なあの体験なんか、波がさらって行ってしまうのかというほどに、すっきりとした気持ちのまま、私は前へ進んだ。

俺は、秀華に告白なんかして、あっさり了承されて、調子がくるってしまいそうだった。でも、それでもあの恐怖から、少しは抜け出せた。俺の心臓も、あの時と同じようにバクバクしてる。『サイレント』あれは何なんだろう。現実だけど現実じゃない。あの世界から戻る方法は紙に従って行動すること。

「はぁ。気が重い。」

ぼそっと口にしたが、秀華はもう進んでいる。俺も気持ちを切り替えて、前を向かないとだめだな。俺は、こんな不思議な体験をした。でも、それは現実だった。不思議な謎だらけだ。だからバージョン2をやる。

俺と秀華は、勇気を出して前に進んだ。

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サイレント 杉並冬寺(kasai012) @kasai012

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