かっこいいなと思いました

「········うん、分かった、俺らもそっち行くから」


 しばらくして、圭くんから電話がありました。

 陽介くんは少しだけ残念そうな顔をして私を見ます。


「藤白さんと二人っきりでいられる時間も、終わりか〜」

「はいはい、馬鹿な事言ってないで二人のところ行きましょうね?」

「どんどん藤白さん俺の扱いに慣れていってる·········うっ」


 陽介くんは私の成長が嬉しいのか何なのかはしりませんが、涙を拭うような仕草をします。


「陽介くんは私の親か何かですか?」

「彼氏候補?」

「そういえばそうでしたね·····告白してたんでしたねすっかり、忘れてました」


 陽介くんは私の言葉を聞いてしょんぼりしてました。


「嘘でしょ·····?」

「もう友達って感じが強くて·····」

「藤白さん俺頑張るから!·····えっと、すっごい頑張るから!」


 陽介くんは私の手を握って食い気味に言います。

 私は急にそんな事をされるので、恥ずかしくなります。

 チラチラと周りの人が私たちを見ています。


「·····よ、陽介くん」

「ん?何?」


 陽介くんは周りの視線など気にしていな様子です。

 私は恥ずかしさが限界突破しそうなところで言います。


「·····ここ外なので!恥ずかしいので!」

「あ!、そうだった·····ごめんね」


 あっさりと手は離れました。

 私は熱くなっている顔をパタパタと扇いで、熱くないと言い聞かせます。

 陽介くんは何も無かったような顔をするので、内心で天然って怖いと思いました。


「·····おっ?、おーい圭!」


 元気に手を振る陽介くんの視線の先に圭くんと千紘ちゃんがいました。


「ごめん、電話、気づかなくてさ」

「気にすんなって、なんかあったらどうしようとか思ってたけど·····圭なら大丈夫だから心配して損だしさ?」

「俺、喧嘩出来ないけど?」

「したら停学とか処罰あるからだろ?」


 何やら物騒な言葉が聞こえたが私はスルーして千紘ちゃんに視線を戻します。


「千紘ちゃん·····それって」

「あぁこれ?、前野くんに貰ったんだ·····私には勿体ないよ」


 千紘ちゃんは嬉しそうに微笑みます。


「すっごい可愛いです!·····千紘ちゃん今度、服買いに行きましょうよ!」

「えー、遠慮しとくよ·····私みたいな奴が着飾っても·····ね?」


 千紘ちゃんの言葉に反応して、圭くんの顔が一瞬険しくなりますが、またいつも通りの笑顔に戻ります。


「東堂さん、その言葉は良くないよ?·····東堂さん可愛いんだからさ?」


 私に言われた言葉では無いのに圧力を明確に感じます。

 千紘ちゃんのは「あ、やってしまった」と言いたげな表情をしています。


「夏奈·····私行きたいな〜?」


 千紘ちゃんの言葉に私は安堵して目を輝かせて言います。


「はい!また都合の合う時間を教えてくださいね!」

「うん·····楽しみにしてる」


 千紘ちゃんの言葉を圭くんは頷きながら聞いています。

 陽介くんはそんな圭くんの様子を不思議そうに見ています。


「·····圭って千紘と今なんかあった?」

「·····無い無い、気の所為だって」

「本当か?」


 陽介くんは何かが引っかかるのか、圭くんを疑いの目で見ています。

 そんな圭くんは笑ってるだけです。


「ま、いっか」


 何か思ったのか、陽介くんは何かを思ったのか、疑いの目で見るのをやめました。


「ん〜、あっという間だったねー!」

「そうですね、ニッシー」

「藤白さん?」

「何?ようちゃんバレたの?あだ名?」

「まーた射的で暴れたんだ〜?」


 圭くんと千紘ちゃんは陽介くんをニヤニヤと見ています。

 陽介くんは頭を抱えています。


「あ〜、クソっ!射的やる時に本気でやらなきゃ良かったー!」


 私たちはその様子を見て笑ってしまいました。


「夏奈ちゃん、ようちゃんどうだった?射的のニッシーになってた時」

「えっと·····」


 私はぬいぐるみをギュッと抱きしめながら言います。


「か、」

「か?」

「かっこよかった·····と思います」


 陽介くんはその言葉に目を見開いて黙っています。

 今度は私が、素直に言うじゃなかったと心の中で頭を抱えています。


「·····た」

「え?」


 陽介くんの言葉が聞こえず聞き返します。


「良かったー!、俺射的全力でやって良かったー!」


 陽介くんは目に涙を浮かべて歓喜しています。


「ようちゃん、良かったなかっこいいだってさ」

「これはもう脈アリでは?!ワンチャン藤白さん俺の事好き説ない?!」

「気が早い」


 千紘ちゃんと圭くんが呆れながら陽介くんを見ています。


「夏奈ちゃんも災難だな〜、ようちゃん一途だししつこいし」

「よぉし!圭、歯食いしばれ?」

「待て待て!暴力反対!」


 陽介くんは満面の笑みで拳を圭くんに向けます。

 圭くんは慌てています。


「よ、陽介くん?!·····暴力はダメですよ?!」

「·····冗談だって、俺は暴力はしないから」

「その拳は?」

「なんだと思う?」

「·····やっぱり暴力じゃないか!」


 二人のやり取りを聞いて私と千紘ちゃんは笑います。

 あっという間に楽しい時間は終わって、私の家の前に着きました。


「今日は本当にありがとうございました」

「あ〜、私たちはまだ先にあるから、夏奈とここでお別れかぁ〜、また遊ぼうね」

「夏奈ちゃんまたね」

「藤白さんありがとう、じゃあね」


 私は三人が見えなくなるまで外にいました。

 一人になると寂しさが溢れてきます。


「今日お祭り楽しかった?」

「うん、楽しかった」


 私の言葉にお母さんは安堵します。


「夏奈、もし友達呼びたいなら遠慮なく呼ぶのよ·····私頑張っておもてなしするから」


 私はお母さんが張り切っている姿を見て嬉しくなります。

 陽介くんたちと仲良くなる前は心配させる事が多かったので、こうやって笑っているお母さんを見ると心配させたなぁと思いました。


「お母さん」

「何?」

「·····ありがとう、私が塞ぎ込んでた時·····見捨てないでくれて」


 私がそう言うとお母さんは私の頭を撫でます。


「何言ってんだか、子供を見捨てる親が何処にいるのよ」


 私はその言葉を聞いて、目頭が熱くなります。

 そんな時、ガチャりと扉が開きお父さんが帰ってきました。


「ただいま·····どうしたんだ?」

「なんでもない!·····さて、お母さん今日の晩御飯はなに?、私手伝うよ」

「あら、今日は·····肉じゃがよ」

「肉じゃが私、大好き」


 私はそう言って台所に行きます。

 その様子をお母さんとお父さんは笑って見ていました。














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