チュープリ

 火曜日。

 週末の疲れは、だいぶ取れたような気がする。

 朝、登校し教室で毛利さんと顔を合わせる。

 昨日、彼女の部屋でちょっといい事をしたので、それを思い出した。

 しかし、途中で彼女のお母さんに邪魔されたので、他にどこかイチャつける場所を探さなくてはいけないが、まだ見つけられていない。


 日中の授業は平穏に過ぎて、放課後。

 今日は真帆に呼び出されている。

 毛利さんに別れの挨拶をして、さっさと下校する。

 そして、サンシャインシティのマックまでやってきた。

 いつものように120円ドリンクを買って待っていると、15分程度で真帆がやって来た。

「待った?」


「いや、全然」


 真帆もドリンクを持って席についた。

「郡山遠征は、お疲れ」


「お城巡り、どうだった?」

 僕は尋ねた。


「楽しかったよ。お城とか滅多に行く事ないし」


「今回は山城がなかったからね。歩きが少な目でよかったよ」


「そっか。あと、お城もそうだけど、純ちゃんと一緒に旅行できたのが嬉しかったよ」


「あ、そう…?」


「来月もライブ遠征を入れようと思っているから、また行けるね」


「どこに遠征するの?」


「今、話が来てるのは名古屋、詳細は今確認中。また、歴史研の人たちも一緒にどうかな?」


「名古屋なら、以前、名古屋城に行ったから、歴史研と合同にはならないよ」


「そっか、残念」


 2月は、どの城に行くか聞いてないが、O.M.G.のライブ遠征と日程が被れば今度こそ、お城巡りは僕は不参加になるな。

 期待しよう。


「来月上旬は、」

 真帆は話を続ける。

「バレンタインの準備もしないと」


 バレンタイン、そういうイベントもあったな…。

 去年まで、僕の中学時代はまったく関係ないイベントだったが。


「何をするの?」


「手作りチョコをファンに配るの」


 それは大変そうだな。

 その後も、僕と真帆は世間話をして過ごす。

 小一時間もしただろうか、突然、声を掛けられた。


「お兄ちゃん!」

 妹の美咲だった。中学帰りでセーラー服。

 そして、友達の卓球少女の前田さんもいる。

「こんにちはー」

 前田さんが挨拶して来た。


「や、やあ」

 僕はちょっと驚いて返事した。


 真帆は妹に話しかける。

「妹さんですよね? こんにちは」


 真帆と妹は会ったことがあったんだっけ…?


「どうも」

 妹は不機嫌そうに挨拶した。


 僕が前田さんを紹介する。

「こちらは妹の友達の前田さん」


 真帆と前田さんは挨拶を交わす。


「お前ら、なんでここにいるの?」

 僕は尋ねた。


「ガチャをしに来たんだよ」

 妹は相変わらず不機嫌そうだ。


 そうか、たしかサンシャインシティ内にガチャガチャコーナーがあったっけ。

 妹たちとの話もほどほどした後、彼女らは離れた席まで行って座った。


「真帆は、妹と会ったことあったっけ?」


「うん。合コンの帰りに会ったじゃん?」


 そうか、あの時か。すっかり忘れていた。

 そして、妹は今日も不機嫌そうだったが、家に帰ったら一悶着ありそうたな…。


「ねえ、これからプリ行かない?」


「プリ? プリクラ?」


「そうそう」


「プリクラ、撮ったことないよ」


「いいじゃん、いいじゃん」


 半ば強引に真帆に連れられて、僕らはマックを後にした。そして、サンシャイン60通りにあるゲーセンまでやって来た。

 僕は初めて来るので何のゲーム機がどこにあるのか知らないが、真帆はよくわかっている様子。迷う事なくプリクラコーナーまでやって来た。

 

 適当なプリクラ機に入ると、真帆がお金を投入。

 するとプリクラ機から色々指示されて、いろんなプリを撮る。


 後半、真帆が言ってきた。

「チュープリする?」


「チュープリって、キスするんじゃん?!」

 僕は突然の提案にかなり驚いた。


「そうだよ」

 真帆は平然と答える。


「いやいやいやいや、そんなの恋人同士がやるもんでしょ?」


「えー。友達同士でもするよ」


「それは女子同士だからなのでは?」


「そうだけど、純ちゃんとならいいよ」


「い、い、い、いや…、遠慮しておく」

 まったく、何を言い出すんだ。


 そんなやりとりもありながら、結局、普通にプリクラを撮った。

 出来上がりの写真を見る。なんでこんなにデカ目にするんだろう。

 ちょっと不気味だ…。


 ゲーセンを去って、真帆とは池袋駅で別れた。


 自宅に帰ると、妹もちょうど帰って来たばかりのようで、まだセーラー服のまま台所の冷蔵庫の中を漁っていた。


 妹は僕を見ると一言。

「スケコマシ」


「何だよ」


「今日の人、福島で一緒に寝てた人でしょ?」

 妹はスマホの画面に旅館での添い寝写真を出し、それを見せつけて言う。


「それは、イタズラされたって言っただろ?」


「それでも、今日も会ってヘラヘラとデートしてたじゃん」


「ヘラヘラなんてしてない。デートじゃないし。あと、お前、人前で不機嫌そうにするなよ。相手に失礼だろ。嫌われるぞ」


「別に、お兄ちゃんの相手に嫌われてもいいもん」


 妹は冷蔵庫から紙パックのジュースを取り出してコップに注ぐと、一気にそれを飲み干し、台所を去って行った。


 ここ数ヶ月、妹の絡みがどんどん酷くなっていくような気がする。

 上杉先輩の悪い影響を受けているに違いない。迷惑な話だ。


 僕も同じジュースを飲んだら、自室に行って、くつろぐことにした。

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