球技大会の打ち合わせ

 週末は、雪乃は演劇部と自分の用事があるとのことでデートもなく、歴史研のお城巡りもなく、久しぶりに自室でゴロゴロすることができた。

 マンガ(エロも含む)を読んだり、ネットを見たり、将棋の本を読んだり、少しだけだが勉強もした。

 やっぱり、自分の部屋でゆっくりするのが一番いいよな。


 そして、週が明けて月曜日。

 先週、雪乃にもらったネクタイピンをちゃんとして登校。

 いつもの様に、雪乃とげた箱付近で出会うと、雪乃はそれに気付く。

「付けてくれてるのね」


「うん」

 ハートが入っているのがちょっと恥ずかしいが、小さいし、だれも気付かないだろう。


 その日の放課後、事前に連絡があって、生徒会に呼び出されていた。

 月末に球技大会をやるので、その打ち合わせということだ。


 今日は教室を使う。

 各クラスのクラス委員が集められ、大会の準備の振り分けと当日の競技の内容が伝えられる。

 生徒会は、伊達、松前、津軽、佐竹、織田、武田のフルメンバーの参加。

 僕は一応、顔を出すだけで、何もしない。“居るだけ副会長”だからな。

 

 伊達先輩は会議を主導してどんどん説明をしていく。

 大会は毎年同じように開催しているから、その手順を踏襲すれば良いだけなので、伊達先輩には簡単な仕事だろう。

 僕も安心して聞いているだけで居られる。


 球技大会は、校庭の広さにも限度があるので、競技は限られる。

 校庭でソフトボールとサッカー。体育館でバスケと卓球をやる。

 話を聞くと、クラス対抗になるので、試合のない時は休んでいてもいいとのこと。競技をしている時間より、休んでいる時間のほうが長くなるとのことだった。

 まあ、それのほうがいい。ずっと運動していると疲れるからな。


 つつがなく会議は終わる。

 後は各クラスのホームルームで、誰がどの競技に出るか決めて当日に臨むことになる。

 生徒会役員共は生徒会室に戻る。

 会議の資料をまとめて片づける。

 それが終わって、皆が椅子に座って落ちついたところで、伊達先輩が話しかけてきた。

「武田君、卓球と言えば、あれから卓球部からのお誘いは無いの?」


「ええと…。学園祭の時に少し言われましたが、それっきりです。何で、僕を誘って来るのかは謎ですね」


「スジが良さそうって、島津先生や羽柴君が言ってるみたいね」


「いや、と言っても僕みたいなド素人を引き込んでも、部にプラスは無いのでは?」


 勧誘はいい迷惑だからやめてほしいのだが。


「純也、卓球できるんだ?」

 僕の隣に座っている雪乃が尋ねた。


「できると言っても、人並みぐらいだよ」


「球技大会では卓球を選ぶの?」


「うーん。どうしようかな」


 ソフトボール、サッカー、バスケ、卓球の中で一番楽そうなのはなんだろう?

 やっぱりあまり走り回ったりしない卓球なんだろうか?

 ソフトボールも打順待ちがあったりして、楽かもしれないな。

 うーむ。明日のホームルームの時までゆっくり考えるとしよう。


「雪乃は?」


「私はバスケかな」


「スポーツ得意なんだっけ?」


「まあまあ」


 じゃあ、球技大会の当日は、雪乃がバスケやっている様子を拝見させてもらおうかな。

 その後も生徒会役員共は下校時間まで雑談をして過ごした。


 僕は、生徒会室のコルクボードに貼られている怪文書が気になったので、もう一度見てみることにした。

 学園祭の時に届いたという謎の文章。

 僕がなぜ気になっているかと言うと、報酬が1.57M(157万円?)というところだ。大金は欲しい。


 ◇◇◇

 今年の雑司祭も上手くいった。

 来年も上手くいくだろう。


 来年は、

 1.CROWNから奪う

 2.F(人生、宇宙、すべての答え/3)に通う者への手紙を見ろ


 もし、私を捕まえることができた者には報酬を与える。

 報酬は1.57M。

                           Р

 ◇◇◇


 怪文書で今のところ分かっているのは、「2」の部分。


『F(人生、宇宙、すべての答え/3)に通う者への手紙を見ろ』

 は、

『F14に通う者への手紙を見ろ』


 ということだけ。


 僕が怪文書を見ていると、伊達先輩が話しかけてきた。

「これについて、何かわかったの?」


「いえ、全然」


「わかったら、教えてね」


 伊達先輩はそう言うも、謎は全然解けそうにない。


 生徒会役員共は生徒会室を後にした。

 校門までの帰り道、雪乃が尋ねて来た。

「水曜日の放課後、空いてる?」


 歴史研があるけど、まあ、行かなくてもよいかな。何もしてないし。

「空いてるけど」

 と返事をする。


「そう。空けといて」


「いいけど。なんで?」


「いいから、いいから」

 といって微笑んだ。


 なんだろう?

 まあ、いいか。

 そして、僕は、雪乃や他の生徒会役員たちと別れ帰宅した。

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