アイスクリーム
週が明けて月曜日。
今朝も生徒会長候補の伊達先輩達と北条先輩達が、校舎の入り口で立って登校する生徒に投票のアピールをしていた。
でもって、放課後。
僕は掃除当番だったので、校舎入口の掃除を終わらせて、少し遅れて部室に向かう。
すると、そこには予想外のメンツがそろっていた。
伊達先輩、上杉先輩。それに…、クラスメートの毛利歩美。
なぜ毛利さんがここに?
そういえば、先週、上杉先輩に迫られて(?)いる時にここに来たな。何か用だろうか?
「やあ、来たね!」
上杉先輩が声を掛けて来た。
「いま、毛利さんが入部の相談に来たところよ」
「えっ!、毛利さん、入部するの?」
僕は驚いた。
毛利さん、物好きだな。先日、僕は入部はあまりお勧めしないと言ったはずだが…。
僕も空いている椅子に腰かけて話を聞く。
伊達先輩が毛利さんに質問をしているところだ。
「歴史には興味があるの?」
「もともと本を読むのが好きで、歴史小説もそれなりに読んでいます。なので、歴史にも興味があります」
「歴史小説と言えば、司馬遼太郎とか?」
「私が好きなのは、陳舜臣です」
「渋いわね」
伊達先輩はそう言うと、少し微笑んだように見えた。
僕には何言っているのか、さっぱりだ。
「じゃあ、これが入部届。クラスと名前を記入してね」
伊達先輩はそう言うと、入部届を机の上に差し出した。
毛利さんは、すぐそれに記入を始める。
「図書委員の仕事があるので、火曜と金曜は来れません」
「それは、構わないわ。部室に来るのも来ないのも自由よ。私と紗夜は、だいだい来てるけど」
「わかりました」
僕は2人に割って入った。
「僕の時は、歴史が好きかどうかなんて聞かなかったですよね?」
「あなたの時は、部の存続の緊急事態だったから、そう言うのは省略したのよ」
1年生の入部者が居なかったから、部の存続の危機ということで、半ば強制的に入部させられたのだった。
「じゃあ、毛利さんが入ったから、もう僕は必要ないですよね?」
「「「えっ?!」」」
そこにいる女子3人全員が驚いて僕のほうを向いた。
伊達先輩がたしなめる。
「武田君はこの部に必要な人よ」
上杉先輩が脅しをかけてくる。
「逃がさないよ」
そして、毛利さんは捨てられた子犬のような目で僕を見つめ、無言のプレッシャーを与えてくる。
「じょ、冗談です」
女子3人怖い。
この部室、女子率が上がって来るな。
もともと、あんまり女子と口きいたことが無かったのに(せいぜい妹ぐらい)、大丈夫かな? まあ、先輩2人のおかげで、少しは慣れて来たけど。
「じゃあ、今日は毛利さんの入部祝いで、池袋に新しく出来たアイスクリーム屋さんに行きましょう。毛利さんは、おごるわよ」
ん…? 僕が入部した時はアイスおごってくれなかったぞ。
僕ら4人は今日のところは早々に部室を後にした。
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