反論の仕様も無ぇ
『反論の仕様も無ぇ』
「…」
意を決した彼女は最後の防壁を自ら取り払った。露になる白磁の双丘はしかし丘と呼ぶには平均より二周り以上は有ると見れる。
脳裏を過った『たわわに実った水菓子』という助平爺じみた感想は其の儘思考の外まで通過させて掛けるべき言葉を手繰った。
「…綺麗だな」
結局月並みな台詞で済ませる。指の背を腰から上向きにゆっくりと這わせ麓の輪郭に沿うように遊ばせる。
「んっ…、なんか、慣れた感じ」
時折爪の先で軽く掻くような動作を混ぜると明らかに其れと解る嬌声が混じった。どうも此れがお気に入りらしい。
「そう言われたら反論の仕様も無ぇが…嫌か?」
好悪を聞いた所で時を逆しまにしようもない。人に言わせると私の童貞芝居は見れた物でないとも聞く。
「えっと、多分、ちょっと妬いちゃってるかも…」
曖昧な言葉を多用するのはその感情自体に馴染みが無いことが大部分を占めるのだろう。彼への恋慕を語っていながら私にも独占欲を示す自身の賤しさに抵抗を覚えているのやも知れない。
「光栄だな、まぁ今は確実にお前の物だから安心せぇよ」
柔肌を堪能していた掌を頬に、次いで旋毛まで持ち上げ二度三度ゆっくりと撫で下ろす。
「…どうやって返したら良いかわかんないよ」
感に極まったらしい彼女は初めて己から肌を寄せてくる。素肌が添い合う安心感と其れを吹き飛ばしかねない胸板に掛かる圧迫感の不調和に多少の混乱を覚える。何方かと言えば瘦身を好みがちな私にはあまり体験の無い柔和な感触だった。
「こんだけの役得貰っといてそれ以上は罰が当たらぁ」
此れこそは気遣いではない、まして男前ぶろうと言う腹でも。
「ん…じゃあ、もっとあげる」
腰に添えた私の腕に応えるように両手を背中に回し更に距離を詰めてくる。引け気味だった腰が躙り寄り上腿の更に上に向け血流がぞわぞわと込み上げるのを感じていた。
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