第3話 最近のラノベに多いハードモードかよ・・・

「なんだこりゃ!!!!!」




俺の転移後の第一声である。


そりゃそうだろう。

転移後 目の前に広がった景色は、元の世界で「御神木」と言われている様な巨大な木々が鬱蒼とした、密林 所謂【ジャングル】で、背中側には雲を突く程に高くそびえ立つ真っ黒な巨大な塔?

塔なのかな?苔むした部分も多くある、太古の建造物と言う様な物の前に、俺は立っていた。


その塔?の周囲は、10メートル程度以上は木々や下草が、殆どはえていない。

ぽっかりと広く空いた空間に、天辺が全く見えない感じで、高く高く建っていた。

当然 一番根元の部分は、かなりの直径が有りそうだが、見た感じだけでは、どれだけの大きさなのか、全く解らない程に巨大だった。


取り敢えず出来る事と言えば、この塔の周囲を歩いて大きさを確認する事くらいかな?


そう思って、塔の周りを歩いて回ろうとした時、

[マスター その前にやって頂きたい事が御座います]

そんな声が左の手のひらから聴こえてきた。


あ、スマートフォンだ……


「えっ?流暢にスマートフォンが話し掛けて来た!」


[はい。マスターの望まれた私は、この世界に最適化された状態で、具現化されました]


「よく解らんけど!なんか凄くなったんだろうとは解る!どんな風に最適化されたの!?」


[マスター 説明の前に、やって頂きたい事が御座います]


「えっ?なにを?」


[後ろの塔に右手で触れて下さい]


「えっ?塔に?えっ?えっ??」


混乱しながらも言われた通りに、塔に右手で触れてみた。


その瞬間 左手のスマートフォンと真っ黒な塔が、目を開けていられない程に強く輝き、その輝きが治まると、苔むしていた塔が、創りたての様に、ツヤツヤのピカピカに変わっていた。

その表面は光沢がある為に、まるで鏡の様に、周囲の風景や俺の姿を映している。


[特異点である、極大の基地局の起動に成功しました]


は?

えっ?はあ?

今 【基地局】とか言ったか?

えっ?ええっ!?【基地局】って事は、携帯電話の基地局!?


[はい。その基地局で御座います]


あれ?俺 無意識に考えを言葉として声を出していたのか?

今 返事をしたよな?

あれ?


[いえ、マスターは声を出されてはおりません]


はい?えっ?

俺の心を読んでいる?


[似た状況では御座いますが、それとは違います]


「えっ?じゃあなんで・・・・・・」


[では、準備が整いましたので、説明を開始します]


えっ?えっ?えっ?


[私はスマートフォンでは御座いますが、元の世界のスマートフォンとは、その根本的な部分から、全く別物で御座います]


「はあ・・・・・・?」

そうなのか?そう言えば、持っていたスマートフォンとデザインが異なる。


[この世界には、スマートフォンは御座いませんでした。私は、この世界初のスマートフォンで御座います]


「はあ・・・・・・」

そうなんだ?この世界には、スマートフォンは存在していなかった・・・・・・と・・・・・・

じゃあ、このスマートフォンはなに?

【スマート】な機能が無ければ、それはスマートフォンじゃないよね。

ただ自律的に話すだけの小さな板じゃ、意味無いよ。


[はい。マスターが疑問に思われるのも当然です。だから、私はこの世界で使う事が出来る様に産み出された、元の世界のスマートフォンとは、全く別物の端末で御座います]


「結局 どう違うの?」

インターネットもアプリも無いんじゃ名ばかりのスマートフォンじゃん。

そんなの有っても意味無いよ。


[簡単に説明すると、私はマスターから分かれ出た分身です。そして、分身とは言え、マスターと繋がりは保たれております]


「はい?分身?」

なんだそりゃ?分身って、スマートフォンだけど、俺の一部でもあるって事?


[その通りです。マスターの能力の一部として、マスターの外部端末として、私はスマートフォンの形で具現化しました]


「あ、【理解】出来る。どうなっているのか、知らない筈の事が、知識として既に俺の中に有る事が解る・・・・・・」

そう、簡単な説明をされただけなのに、自分とスマートフォンの関係性が理解出来る。

このスマートフォンは、スマートフォンだが俺自身でもある。

スマートフォンの情報は、俺の知識としての情報でもあり、

俺が何かを学び知れば、それはスマートフォンの情報として蓄積されていく。


[はい。その通りで御座います。私が知れば、それはマスターの知識となり、マスターが知った情報は、私が内部に保存する情報にもなります]


それが【理解】出来た瞬間、このスマートフォンが塔に触れさせた理由も理解出来た。

端末が在っても、基地局が無ければ通信が出来ない。

だから、先ずは、この世界最大の【基地局】を起動させたのだ。


「なるほど・・・・・・この基地局を起動させた事で、元の世界のインターネット検索も利用出来る様になったのか・・・・・・」


[はい。可能になりました]


「この極大の基地局の起動で、この星の半分は、簡単なマップで大まかに把握が可能になったのは、凄く便利だね」


[はい。もう理解されていらっしゃるでしょうが、この世界に基地局や中継器を、沢山 設置する事で、より安定した通信や詳細なマップを利用可能になって行きます]


「ああ・・・・・・」

そう、適切な場所に基地局を設置し、基地局をサポートする中継器を、多数 設置して行く事で、通信やマップの性能が高くなって行く。

俺は、それが理解出来た。


そして、俺の頭の中には、この星の半分の簡素なマップが浮かんでいる。

この星の真反対の地に、さっき起動した極大の基地局を設置する事で、残り半分を補ってくれる。

それまでは、この星の半分のエリアしか【基本的】にマップを利用出来ない。

しかし、現在 マップ利用可能なエリア以外のエリアの適切な地点に、極大よりも小型の基地局を設置する事で、その基地局がカバーする範囲は、通信やマップが利用可能になる。

そんな事まで、俺には【理解】出来た。


[まだ同期が不完全なので、マスターが意識した事から順に、徐々に同期されております。完全に同期が済みましたら、私が知る事は、マスターもご存知の事になります]


「ああ、そして、その同期は、この世界に移る途中で接触した【神】の様な存在が、お前・・・・・・いや、「お前」や「スマートフォン」や「スマホ」じゃ呼び難いから、名前を付けようか・・・・・・」


[ありがとうございます]


「じゃあ、名前はシムな」


[呼び名の設定が完了しました。固有名詞 シム と私は名前が設定されております]


「【神】の様な存在が、シムに残してくれた、この世界の知識も、今 同期と最適化の最中なんだよな?」


[その通りです]


[そのこの世界の知識は、この世界で生きる為に必要なものから優先して、同期と最適化を行っております]


膨大な量の知識だ、ただ同期しただけでは、その情報量の多さで、脳の処理能力を上回ってしまい、正常に思考さえ不可能になってしまう。

だから、シムは最適化を行う事で、その情報を簡単に利用可能な状態にしてくれている。

そして、今では、この塔の周りを歩いて回らなくても、大きさや形状が解る様になったし、機能も理解出来た。

この塔 【基地局】は、スマートフォンの通信を行うのに必要なのと、元の世界の携帯電話が、GPS以外に、複数のアンテナ基地局を利用して、その携帯電話端末の位置を把握する事が可能だったのと同じ様に、自身の位置情報や簡素なマッピングも行ってくれる。

それと同時に、この【基地局】は、スマートフォンのバッテリーにエネルギーを供給する為の【基地】でもある様だ。

そして、そのエネルギーは、元の世界で【魔力】とラノベなどで呼ばれていた様な物に近いらしい。


つまり、この異世界には、【魔力】と言う謎のエネルギーが存在し、そして【魔法】も存在する様だ。

その【魔力】を使う【魔法】を応用したものが、このスマートフォンだと【理解】した。

当然 【通信】で利用するエネルギーも【魔力】だし、【位置情報】を確認するのに使うエネルギーも【魔力】、基地局がマッピングするのに利用しているのも【魔力】だし、スマートフォンのバッテリーに供給されるエネルギーも【魔力】だ。

ただ、スマートフォンは直接 【基地局】から【魔力】を補充(充電ならぬ充魔?)するのでは無く、俺から放出される【魔力】を吸収する様で、【基地局】から遠く離れていても、持ち歩くなど、身体に近い所にスマートフォンが有るだけで、自然と【魔力】は徐々に補充されていく様だ。

しかし、【基地局】に近ければ近い程、その【魔力】の補充効果が高くなる・・・・・・そんな感じらしい。


俺は少しずつ、現状を【理解】して行った。

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