第2話 再会

「ふぅ…これはまだまだ時間が掛かりそうだな」


今日1日かけて綺麗に出来たのがリビングとキッチンだけとは中々手強いカビ達だ


後は少しずつやっていこう、明日からは輝かしい高校生活が再スタートする


寝室がまだ使えないので仕方なくソファで横になっていると懐かしい記憶が脳裏を過ぎった。



「また私を見付けてね」



彼女も今頃高校生になっているだろうか


あの子の名前なんだったか、今となっては顔も何だか朧気おぼろげだ。


「約束、守るからな」


まるで誰かに誓うように声に出し、ゆっくりと瞼を閉じた。


引越し初日の朝はけたたましく鳴り響くスマホのアラームとカビの匂いによって迎える事になった。


気怠さを全身に纏いながらもソファから起き上がりアラームを止める


掃除で疲れていたせいか体が重い


絶好調とはいかないが初日に遅刻をしてしまう心配は無さそうだ。


「少し早いけど行くか」


スマホでマップを見ながら初登校をする


その後、担任の先生と話しをしたが緊張し過ぎて何も覚えていない。


「おい聞いたか?今日転校生来るらしいぜ」


「高校始まったばかりのこんな時期になんで?」


「美少女だと良いな〜」


「何言ってんだ美少女が来るに決まってんだろ」


「男子ってそればっか、下らない」


教室のドアの前に立つと何やら未来のクラスメイトが騒いでいる。


「やばい、帰りたくなってきた…」


いっそ今から帰って美少女の格好でもして来た方が良いのでは?


そんな事を考えている間に出番が来てしまったようだ。


「はーい静かに、それでは皆さんに今日から入る転校生を紹介します、ほら早く入って来て。」


ドアを開け、教室に入るとクラス中が静かになり一斉に好奇の視線が注がれる。


「それでは自己紹介をどうぞ」


四渡よわたりとおるです、よろしくお願いします」


目線を上げると後ろの方の席に輝く銀髪の美少女が居た


あの銀髪…昨日タクシーの中で見たような…。


「席はそうだなぁ、夢久知ゆめくちさんの隣が空いてるからそこに座ってね」


「はい」


言われるがまま銀髪美少女の隣である最後列の窓際の空席へ向かう。


これから隣の席になるんだし挨拶でもしておいた方が良いのかな


「初めまして、夢久知さんだったよね?これからよろしくね」


「よろしく」


彼女はかろうじて聞き取れる程の小さい声で一言だけそう返すと黙ってしまった。


見た感じ海外の出身っぽいけど日本名だしハーフなのだろうか


そんな事を考えながら教科書を開いた。

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