夢久知さんは伝えたい。
おしるころん
無口なあの娘
第1話 約束
帰って来たらまた私を見付けてね
約束だよ
目の前の少女が寂しそうな笑顔でそう告げた。
「ーーーさんっお客さん起きて下さい、そろそろ着きますよ」
「あ、はい…すみません」
夢か、どうやら少し眠ってしまっていたらしい
重い瞼を開けながらタクシーの窓から外を覗く。
前に住んでいた事もあってか少し懐かしさを感じる街並みだ
その懐かしい景色の中で一際目立つものが視界に入る。
そこには綺麗な銀髪をたなびかせながら歩く女性が居た、海外から来た観光客だろうか
恐ろしい程に整った顔立ちだが上から透明な仮面を被せたような無表情にどこか違和感を感じる
視線を感じたのか一瞬こちらを見た様な気がして思わず目を逸らした。
「はい、着きましたよ」
「ありがとうございます、お会計はカードで」
タクシーを見送り見覚えのある一戸建ての前へ立つ
新生活のスタートに不安と期待で胸を膨らませながら玄関のドアを開けた。
「な、なんだこの匂いっ!?カビか!?」
10年振りの我が家は何年も使われていなかったせいかカビやホコリの温床となっているようだ。
「これは…1日やそこらで片付けるのは難しそうだな」
あまりの惨状に立ち尽くしているとポケットのスマホから軽快な音楽が流れた。
「よお、そろそろ家に着いた頃か?」
「丁度今着いたところだよ、それで父さん達はいつ頃こっちに来るんだ?」
「そうだなぁ、まだ荷物も大分残ってるし仕事の引き継ぎも終わってない、それと…」
「それと?」
「
「あぁ…まぁゆっくり来なよ、こっちもまだ住むには少し酷い状態でさ」
「だろうな、10年前に引越して以来ほとんど人が入ってないからよ」
「それでこの有様か」
「俺達はまだ大分掛かりそうだからゆっくり掃除でもしといてくれ、とりあえずそういう事だからよろしくな」
こちらが返事をする前に強引に通話を切られてしまった
前に少しの間一人暮らしみたいなもんだし楽しくやってくれやと言っていたが、どうやら掃除が怠くて押し付けられてしまったらしい。
今更嘆いた所でどうしようもない
「仕方がない、片付けるか」
そうボヤきながら埃まみれの物置から掃除道具を探し出して渋々掃除を始めたのだった。
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