この『世界』という華を守るために~人助けが趣味の男の異世界転生物語~
@TukinekoRenge
第0話ー1 転生前の物語
俺の名前は神崎護。(かんざきまもる)どこにでもいる高校三年生だ。学校がある日は休まずに通い、学校では陰キャでも陽キャでもない、よく分からない位置にいる微妙な人間だ。
今は登校中。まぁ、人によっては羨ましい、という人もいるだろうが、俺にはそこそこ可愛い幼馴染の女子がいる。名前は花咲蓮華だ。だが、こいつは学校でも人気者だから、幼馴染とはいえ、学校で俺が話しかけるシーンはほとんどない。
しかし、朝は毎日一緒に学校に通っている。放課後はタイミングが合えば、一緒に帰っている。それに、幼馴染だから、家も隣同士だし。まぁ、学校では、俺のことを羨ましがる奴もいるが、別に、幼馴染なだけだから、正直ラッキーなんて思ったことは一度も無い。 ただ、蓮華に興味がないというわけでもない。そんな感じで、このことに関しては、モヤモヤしている。はっきり言って、自分でもよく分からないのだ。
因みに、そのモヤモヤの原因(?)は、今、俺の隣で鼻歌を歌っている。暢気なものだ。 何か隣でずっと鼻歌歌ってるから、何か良い事でもあったのか疑問に思って、俺は蓮華に聞いてみることにした。
「なぁ、蓮華。今日ずっと鼻歌歌ってるけど、何か良い事でもあったのか?」
「~~♪♪」
「おーい、蓮華さーん。聞こえてますかー」
「~~♪……ん? 何か言った?」
「ん? 何か言った? じゃねーだろ!」
「そんなにムキにならなくても良いじゃん!」
「む、ムキにはなってない」
「なってるよ! はぁ~、せっかく昨日良い事あったのになぁ~。――で、何? 何か聞いてたみたいだけど」
「だから、ずっと鼻歌歌ってるけど何か良いことあったのかって聞いてたんだよ……ん?あったのかよ!?」
「あったよ~~。じゃないと鼻歌をずっと歌ってるわけないでしょ~」
「それもそうか。――で、何があったんだ?」
「それがねぇ~、明後日の放課後、私が好きな歌手の限定チケットを譲ってもらえるんだよ~」
「それは良かったな。友達に譲ってもらうのか?」
「違うよ」
「じゃあ、誰にもらうんだ?」
「本名は知らないんだけど~、SNSで知り合った人がいて~、で、その人も私と同じ歌手が好きなんだよ~。で、その人は、一週間後のライブにも参加する予定だったみたいなんだけど、ライブの日にどうしても外せない用事ができたみたいで、チケットを捨てるのは勿体ないからって、私にくれるって言ってくれたんだよ~。しかも限定席に座れるチケット!」
蓮華は笑顔でそう言った。
「それは良かったな。でも、その人、わざわざここまで届けに来てくれるのか?」「そうだよ」
「その人も大変だな。近くに住んでるとは限らないのに」
「いや、私が、すぐ近くにある駅の名前を言ったら、たまたま近くに住んでるみたいだから、大丈夫って言ってたよ」
「そうだったのか。それは本当に運がいいな! でも何で蓮華にくれるんだ? その人にも、他に知り合いがいるだろうに」
「あぁ、それはもしかしたら、私がこの前その人に、いつか限定チケット買って、限定席でライブ見たいって言ったからかも」
「そうなのか……?」
「ん? どうしたの? 護」
――待てよ、話が出来過ぎてないか? 蓮華が限定チケットが欲しいって言った後、日にちが少し経っているとはいえ、蓮華が限定チケットが欲しいって言った人が、都合よく限定チケットを買っていて、都合良く用事が出来て、しかも住んでいる場所も近いなんて……。
「おーい、聞いてるーー?」
「蓮華、その人と関わるようになったきっかけは何なんだ?」
「ん? きっかけ? きっかけはねぇ、ある日からその人が、毎日リプとか送ってくれて、それから仲良くなったんだよ」
「そうか……」
――やっぱり思った通りだ。そいつは怪しい、蓮華に限定チケットを渡すために会うっていうのも本当か分からない。蓮華も警戒心無いからなぁ……。不安だし、何事も起きなければ良いが、一応ついて行くか。
「なぁ、蓮華。俺もついて行って良いか?」
「何で?」
「特に理由はない」
「私は別に良いけど……」
と蓮華は少し不安そうに言った。
「けど?」
「私がチケットを貰うことを親にばれて怒られちゃいけないから、なるべく一人で来てほしいって言っててさ」
「じゃあ、隠れておくからさ! かくれんぼで隠れるの上手過ぎて、置いて帰られた男を舐めんなよ?」
「自慢にもならないよ。それ」
「ま、まぁ、とにかくついて行っていいか?」
「うーん……分かった、良いよ。――その代わり、絶対見つからないでね!」
「任せろ!」
――やっぱり怪しいな。一人で来いとか、普通言うか? 蓮華に一人で来てほしいって言われたって言われなくても隠れて見るつもりだったが、ますます見つかるわけにはいかなくなったな。もし、相手が何かを企んでいた場合、俺が見つかってしまったら、後日、蓮華が何かされるかもしれない。それだけは避けなければ……。
「ねぇ! ねぇってば!」
「何だよ、蓮華」
「だから、何でついて来たいの? って言ってるじゃん」
「ごめんごめん。ボーっとしてた」
「もーー!」
「牛か?」
「違うわっ!!」
そう言って蓮華は俺の頭を叩く。
「ひでぇーなー。何も叩かなくたって良いじゃんか!!」
「護が私のこと牛とか言うのが悪いんでしょー」
「はいはい。悪かったよ。――で? 話って何?」
俺がそう聞くと、蓮華はため息を一つついた後に、話始める。
「さっきも言ったけど、何でついて行きたいの? 特に理由はないって言ってたけど、絶対噓でしょ」
蓮華にバレたら何を言われるか分からないので俺はまた、嘘をつくことにした。
「確かにさっきのは嘘だよ。本当のことを言うと、見ず知らずの蓮華に親切な行動をしてくれる、素晴らしい人間を見てみたいからだよ」
「なるほどねー。――護はその人を見て、学んだら? 私と17年以上一緒にいるのに、全然親切にしてくれないじゃん。いじわるばっかり……。」
俺はそれを言われてちょっと傷付いた。
「ま、まぁ、そう言うなよ。それについては悪いと思ってるからさ」
「ホントにー?」
と蓮華が頬を膨らませる。
このままの空気は俺が耐えられない気がしたので、俺は話題を変えることにした。
「お、学校についたぞ!」
「ホントだー……って話をそらさないで!!」
「はいはい。ごめんって」
――どんだけ根に持つんだよ。まぁ、良いか……さっさと学校に行こう。
そうして俺と蓮華は学校に入っていくのだった――。
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