僕は美男子じゃないし、彼女は美少女じゃないそれでも僕らは恋をする

パグだふる

第1話 春の始まりは恋の始まり?

 高校一年の春休みが終わり、新学期が始まる。新学期はクラス替えがあり、環境がガラッと変わる。


 それにより、折角できた友人と離れ離れになってしまう人がいる中、俺は一年の頃から割と仲の良かった男友達と学年一の美少女と名高い群青さんと同じクラスになることが出来、内心小躍りしていた。


 そんな俺の内心を知ってか知らずが、先ほど話題に出した今年も同じクラスになった男友達の吉田詩が俺の肩に手を置き、話しかけてくる。


 とはいえ詩は全体的に中性的な容姿をしており、身長自体もそこまで高くない。そのため、俺の肩に手を当てるために精一杯背伸びをする格好になっている。


「おお、久しぶり~、今年もよろしくね」


 しかし、それでもその声自体には無理をしている様子がなく。何となく掴みどころがない雰囲気を感じさせる。


「うん、久しぶり。詩は春休み何やってたの?」


 俺の問いに詩は少しの間考え込んだ後


「別にたいしたことはやってないよ。強いて言えばゲームかな?それよりも湊こそ何やってたの?彼女とか出来たりしたの?」


「いや、俺もゲームくらいしかしてなかったかな?前からやってたFPSゲームでようやく次のランク行けそうでさ。後、狩猟ゲームの新作とか。結構、色々あったからな。てか詩もゲームやってたんなら一緒にやりたかったな」


「確かにね。あの狩猟ゲームなら僕もやってたから一緒にやれたらもっと楽しかっただろうね。でも、お互い長期休みに入ると途端に連絡とらなくなるからね難しそうだよね」


 詩の言ってることは最もで俺も詩も夏休みに入ると途端に連絡を取らなくなってしまう。


 別に仲が悪いわけではないのだが、学校で顔を合わせる関係上、休みの時くらいは距離を置いている。正直、そのくらいの距離感の方がお互い疲れなくて良いような気がするんだ。


 ☆☆☆


 歩きながらお互いの近況を話し合っていたこともあり、早々にクラスに着いた。


 クラスではやはりというか群青さんを取り囲んでいる男子生徒とそれを止める女子生徒(群青さんの友達)が言い争いをしていた。


 それに対し、当の本人である群青さんは困り顔をしながら仲裁に入っている。


「湊も行かなくていいの?」


 いたずらっ子のような顔をしながら詩が問いかけてくる。確かに群青さんとの関りは欲しいけど、誰があんな嵐の中に顔を突っ込むか。そもそもあんな場所に顔を出さなくても俺には秘策があった。


「俺は委員会で群青さんとお近づきになるからいいんだよ」


 その言葉を聞いた詩は少し関心したような顔をする。


「成程ね。まあ、確かにただ話しかけて変な奴とか苦手意識を持たれるよりは得策かもね。でもそれ、結構みんな考えてそうだけど?」


 詩のいうことは尤もだ。とはいえそうなった際のことも考えている。


「そうなったら」


「そうなったら?」




「諦めるしかないだろうな」


 俺の返答に少し期待していたのか詩は肩透かしを食らったような顔をしていた。


 いや、仕方ないだろう。他に案とかないし、結局のところここ以外に俺が群青さんと関わることとかなくない?とはいえ俺はこの案を机上の空論だとは思っていない。


 なぜなら


「まあ、見てな。今日の俺はついている。何故ならあの群青さんと同じクラスになったのだから。」


 俺は詩に胸を張ってこの作戦の根拠を告げる。




「いや、でも、それって。このクラスの人間全員じゃないか?」

 ・・・・・・




「まあ、何とかなるから。何とかなるから。見てな」


 俺のその言葉と同時にホームルームの予鈴がなった。


 ☆☆☆


 今日は新学期初日ということもあり、そこまで重要な話もなく、当然ながら授業もなく進んでいく。


 通常ならこの時点でみんなの気も緩んでくるのだが、今回に限ってはそうではない。


 何故なら


「それじゃあ、これから委員会を決めるから、お前ら希望の委員会に手を挙げろ」


 その言葉と共に男子生徒の緊張が頂点まで高まる。


 男子生徒の中には自分を鼓舞するために雄叫びを上げるものまで出てきているレベルだ。


 しかし、今年の担任は去年も群青さんのクラスを持っていたため、対して驚きもせずに淡々と委員決めを進めていく。


 とはいえ、委員というのは基本的にはクラス全員が何らかの委員に入るものではなく、大体クラスの六分の一程度は委員会に所属していない生徒が出てくる。


 そのため、その枠を狙ってギリギリまで何の委員会にも挙手しないというのが大多数の生徒の定石となっていた。


 このことから委員決めでは手が上がらなかった委員に関しては一度飛ばし、他の委員を先に決める。


 そして、多くの委員が飛ばされていく中一つ一際多くの人が手を挙げる委員会があった。


 当然ながら群青さんが手を挙げた委員会だ。


「おお、図書委員はっていうか群青が立候補するからかもしれんが相変わらず多いな。他の委員でもこのくらい手を挙げる奴が多ければいいんだがな」


 担任の教師はそう言いながら嘆息をする。


 しかし、男子生徒のほとんどはその言葉を聞いておらず、人数が割れたことに対するじゃんけんのための気力をためていた。

 

 当然気力をためようがじゃんけんで強くなるわけでもない。ただ、勝利の女神と運命の女神に愛されていた者のみが勝利を手にする。


 だから、俺は他の男子生徒たちと違いクールに戦場(あくまでもじゃんけんをするために集まっている)に赴いた。

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