遠いおもひで

苦手で嫌いだったけど

ずっと眩しくて憧れていた

追いつかなくて届かなくて

それでもだからこそ


そんな季節。



乾いた土埃の匂い

蝉の声が降り注ぐなかを

陽射しに焼かれながら

木陰を探しながら歩く


汗を流したあとに飲む

冷たく澄んだ水の美味しさ

水滴のついたコップを揺らせば

溶けかけた氷が、カロンと音をたてる


丸みをおびた白い冷蔵庫

冷やされている葡萄の嬉しさ

アルミのレバー付き製氷皿に

こぼさないように水を入れる


蚊取り線香の立ちのぼる煙と匂い

布団の上に敷いたゴザ

お腹にバスタオルをかけて

祖母が団扇うちわであおいでくれる


そんな、夏。




あれはもう還らない


懐かしい遠い、夏。

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