静かな現実

病院の待合室で

ついたままのテレビの音が

いやに耳についてイライラする

順番はいつになるのかな


雨は止んでいるけど

窓ガラス越しに見る空は

灰色雲に覆われたまま

今にも降り出しそうで


考えたくない色々なこと

考えないわけにはいかない色々なこと

笑っていたくても

どうしても笑えない日もあるけれど


そういう日もあるさ、と

自分に言い聞かせる

こんがらがった気持ちは

少し放っておくのも一つの方法



病院の待合室には

色々な人たちがいて

それぞれの人生と病を抱えながら

普通の顔をして座っている


そうして


名前を呼ばれて診察室に入っていく

ひとつずつの静かな現実と共に



雨は何とか降らずにもってくれるだろうか


そんなことを考えながら

わたしは読みかけの本を

今日に限って忘れたことを後悔しながら

ぼんやりと昏くなっていく空を見ている



ぽつり、と雨粒が窓ガラスに弾けた


名前はまだ、呼ばれない

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