あの日の想い出

それはとても大切にしているのに

開いて読み返すことができなくなった

そんな本に似ている



胸にしっかりと抱え込んた本

内容も覚えているけど

それはどこか曖昧になっていたり


曖昧な記憶とともに

想い出す情景は優しい水彩画のよう

このページは春、こちらは夏、秋、冬


咲く花々、緑の息吹、鳥の声、風の囁き

雨の恵み、枯葉を踏む音、雪のひとひら


澄んだ青空を往く雲の行方に思いを馳せ

空を飽きず見つめていた日

青から少しずつ茜に染まっていく夕暮れ


胸にしっかりと抱え込んた本

内容も覚えているけど

それはどこか曖昧になっていたりして



だけど、それでいい

想い出は読み返さないからこそ

切なくも懐かしく美しい



わたしはこの本をずっと大切に

胸に抱えている

これからも開かない


大切な想い出だからこそ


こうしてそっと抱きしめたままで

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