2節 動き出していた『神人』
クエストの一つをこなして帰ってみれば、なんとも自分の眷属の子達が相席くらいの事で言い合いをしている。 これ程見ていて見苦しいモノはない―――とはしたものの、知ったからには放ってはおけない……
「ちょっと待ちなさい、あなた達。 多寡が相席くらいでなんて下らない
「なあアンジェリカ、聞いてくれよ!いやオレだってよ、相席を求められたらイヤな顔はしないさ。 けどな……この
「なんて言われたの―――」 「……蜥蜴臭いって―――」
そして、どうしてこうなったかの経緯をよくよく聞いてみると、精霊でも上級に位置する
{*確かに
騒動の発端となった原因を知ってみると、何とも殊の外『下らない事』とはしながらも、この件はすぐさま解決しなければならない事案だと思ったから、アンジェリカは……
「ねえ、ちょっと―――あなた、自分の非礼を詫びなさい。」
「(……)そう言うお前は?見た処ヒト族のようだが、なぜ精霊同士の
「(はあ……)確かに私はヒト族だけど、こんなつまらない事で争いを見せられるのはあまりいい気はしないの。 それにヒト族である私でも〖聖霊〗の人達とは仲良くやっているわ、だからこそこの彼の方に言い分があるって言う事も判るのよ。」
「(フン―――)そうやって、弱い者同士で傷の舐めあいでもしているがいい。」
「(!)な、なんですって?!」
「(……)〖神人〗の中でも―――いや魔族全体の中でも最下位であるヒト族如きが、誇りある精霊に意見をするなど場違いもいい処だ! それに私は、
今現在では偽装をしているとは言いながらも、元々は〖聖霊〗の派閥に属しているアンジェリカは、自身の可愛い眷属の子達の一人であるこの
……が、すると今度はアンジェリカに苦情の対象が切り替わった―――確かに現在の公主は本来の正体を
そして今、自身の眷属の子が語った事―――そう、ヒト族は魔界の全種属の中でも『亜人族』のコボルドやゴブリンと同じく、最も弱い部類に属する『最弱種』の一つに数えられていたのです。
そうした者からの『意見』と言う
「(このっ……こんな事がまさか『聖霊』の
私も冒険者の身分に身を
それにしてもこの
その『口撃』が明らかなる“挑発”だと判っていたから、敢えてアンジェリカはそこでは挑発に乗りませんでした。
ただ―――黙っているのも癪なので、悔しさの余りに拳を握り、振り上げた―――までで、行く行くは収めたのでしたが。
その言動をどう捉えたのか、果たして
ただ……自分を
そして―――≪
「見つけたわよ。」 「あなたでしたか。 それに様子を見る限りでは、あの場は敢えて
「当たり前じゃない―――それにこんな下らない理由で……」「『言い争いをしたところで何の得になるか』―――ですか……。」
敢えて自分は、あの場でこの
それはそれである意味では正解なのでしたが、実は今回に限ってはそれがいけなかった……いま自分が相手としているのは、〖聖霊〗と〖神人〗の派閥の最弱の存在同士、力も知性も決してそんなには高くないのに??
「フッ―――フフフ……ハハハ、実に不思議な事だ。 我等……いや〖神人〗の最弱種の一つであるヒト》族に、そんな考え方を持ち合わせる者がいようとはな!」
「(な・に……? 今この子―――『我等』と……?それに〖神人〗―――??
まさかこの子……いや、この者も私と同じ??!
はッ! そう言えばなぜ気付かなかったの―――この者は最初から『正義』をやたらと
〖聖霊〗の最弱種の一人から紡がれた言葉が引っ掛かった。 そう―――最下位、低級の存在にしてはあまりに似つかわしくはない知性の籠ったその考え方。
その事により互いの繕いが暴かれようとしていました。 けれども暴かれてまずいのは向うとて同じ事……そう思ったからか。
「そう言うあなたもね……≪擬態≫をするなら“羽”は隠しておいた方がいいわよ。」
「おやおや……おかしなことを言う人だ、私は精霊族……それを、まるで何かと勘違いしているかのような物言いだ!」
「この私の前でそこまで言い切ると言うなら―――いいわよ……その偽装剥がして見せよう!」
ある“心当たり”を言ってみせた。 けれどその者は冷静に対処し、剰えまた挑発をしてきた。
そしてコレがまたいけなかった……〖聖霊〗の最弱種から的確な分析と判断―――そのどちらでもない事が判ったからこそ、今度はヒト族の方から恫喝がなされ、正体を暴いてみせるとまで言ってきた。
しかも最弱種のそれとしては、まさにありえない程の……!?
「(むうっ?!これは『水の気』!? 我らが眷属の子らに、こちらの何者かが扮していると思われましたが―――……まさか『水』を
しかし成る程……〖聖霊〗の方でも既に動いていたか、だがここは一旦退き上げるに越したことはないな……。)今ここで正体を曝されるのは私の本意ではない。 ゆえに今のところは大人しく退く事にしましょう。
しかしどうやらあなたとは不思議な
その存在が『砂』の化身と成った時、砂は風に運ばれ行き、終にはその場からいなくなってしまいました。
しかし、この在り様によって公主も知れる処となりました。
「(『砂』は『土』……それもこれ程の権能を有する者となると限られてくる。
それに向う側も私の事を竜吉公主だと判った事でしょう。 〖神人〗の、それも“地”を
けれどあの者は私と同じではなく、他の派閥の領域に赴き私と同様の使命を全うしようとしていたとは、ね。
フフ―――なあんだ、この私が一足出遅れてしまうなんてね。 中々やるじゃないの。)」
同じ志を抱く者から思わぬ発破をかけられた―――そう感じた公主は、それ以降は彼の者に
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