【照会】 - 人生相談?

私はJ会社の人事部に常駐をして、J会社からアウトソースされた給与厚生社保関連の業務を行っている、J会社ではない会社の社員だ。

給与関連の業務を任されているため、J会社社員の給与データが全て丸見えの状態である。

ここに異動ですっ飛ばされてきた当初は、自分がものすごく可哀想に思えたものだ、あまりの給与の差に。

まぁ、業務をアウトソースするくらいなのだから、自社の社員の給与よりも安く発注できる会社に業務をおろすのは当然の事だろう。

ただ、馴れとは恐ろしくもあり、また有り難いものでもあり。

今では全く、何も感じなくなってしまった。

マヒした、とも言う状態か。


さて。

そんな、人事部 給与厚生課には、度々【人生相談】を持ちかけてくる社員がいる。

<稀に>ではない。

<度々>だ。


『家を買おうか迷っているのですが。』


こんな内容の照会メールを受信した。


宛先間違っていやしないか?

ここは不動産屋ではないぞ?

などという返信は、残念ながら、腕が折れても出来ない立場だ。


J会社は転居を伴う異動がある会社のため、「家賃補助制度」なるものが存在する。

会社命令の異動で転居を余儀なくされた社員に対して、転居先の賃貸住宅を会社名義で契約し、家賃を一定程度補助する制度。

いわゆる、【借り上げ社宅】と呼ばれているものだ。

また、それとは別に、【住宅手当】なるものも存在する。

これは、ざっくり言えば、【借り上げ社宅】を利用していない社員に対して支給する手当だ。

・・・・またも、後輩への説明にようになってしまった。

さておき。

当然、どちらもそれぞれの要件を満たしている必要はあるが。

そこで、件の照会が発生する、という訳。

つまり、【借り上げ社宅】を利用した方が得なのか、家を買って【住宅手当】を受給した方が得なのか。


知るかっ、そんなの!

己の頭で考えろっ!


毎度、口元から出そうになる。

たまに、出る。

そして、周りに驚かれ、笑われる。


「恐れ入りますが、個人的なご事情につきましては、当方ではお答えいたしかねます。規則等を十分にご確認のうえ、ご自身にてご判断をお願いいたします。」


きっぱり断って、照会応答終了。

うらやましい限りだ、そんな贅沢な悩みが持てて。

うちの会社なんぞ、家賃補助も住宅手当も無いぞ。まぁ、転勤も無いが。

昨今の在宅手当なるものも、存在しないしな。

比べたところで、空しくなるだけだ。会社が違うのだから、仕方が無い。

お金というのは、お金持ちのところに集まる仕組みになっているのだな。

お金とお金持ちは、相思相愛なのだ、きっと。

私には、一生無縁のような気がする・・・・あぁ、可哀想な片想い。

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