序章第二節五年後の"元ギルメン"

第6話 幻影の鉱石場

さてはて、どうしたものだ。

帰り道も分からない、こんな場所に来たのはなんの為か。

考えても分からない僕は、鉱石の上に腰掛けた。



「すごい綺麗! 持って帰りたい」

「メアリー、それ幻だから持って帰れない」

「な、なんですとっ!? 」

「幻鉱石は、太陽の光に当たると消失するんだよ。だから"幻"の鉱石って由来で付いた名前よ」

「ほぇ―、これでまた賢くなれたわ!」

「基礎的な話なんだけどなぁ…。メアリーちゃんはほんと自由な子ね」



メアリーの安定さは、落ち着ける安心感である。僕は考えた、この場所に何かあるのではないかと。

立ち上がり、僕はスタスタと歩くとメアリーとフォルスは付いてくる。

木陰の木々の隙間から差し込む日差しが、霧と重なり幻想的な光を放つ。

小さな雨粒が光によって乱反射してるので、鏡見たく自分達が歩いている姿が映し出されては消えていく。

幻鉱石が辺りに沢山ある理由も、恐らくは"幻想を誘う"って意味合いなのかもしれない。



「湿気ぽいよね、蒸し暑いなぁ」

「そうだな、こんな場所エルフでさえ入らないな」

「…俺は一度来たことある」

「流石"元騎士団のギルドメンバー"私を呼び出せない時の話だね」

「メアリー、それは言わなくていい」

「あいあいさ―」

「ふむ、ルイスそうだったのか?」

「まぁな、こう見えても"騎士団のギルドメンバー"だったのさ」



僕は心底悲しいくて表情に現れていた。

そりゃそうだ、団長も行方不明であのときであった少女も不明だ。

一つ一つ、片付けたいがそれも世界に旅立つ理由としては個人的には完璧な理由だった。



「ルイスよ、その齢で思い悩む事はなかろうに。十年前の戦いは悲惨だったのは私にもわかる、その後…父を亡くして喪失感がでかいのだろうけど。よく冒険に出ようと思ったな」

「僕だって立ち止まる訳には行かない、自分で真実を見つけたいだけだよ。過去に脅えてる自分なんかに杭を打ちたいのさ」

「ルイス…」


僕はメアリーが走り回ってるのを追いかける、ようやく腕を掴んで振り向いた。

フォルスの姿がない、周りを見渡すがその姿はない。



「フォルスどこだ…?」

「フォルスより私を見てよ!」

「メアリーちゃんと見てるけど、何だこの場所…さらに霧が濃くないか?」

「言われてみれば確かに、私の魔力反応的には"幻を見せてる存在"が居るね」

「え? それってさ、かなりやばくないか?」

「まぁね、でも…ルイスならティマーしちゃうでしょ?」

「敵による敵に―――」



何かがすり抜けて、トンッっと軽い音が鳴る。的か何かの木製のものに当たる音だ。

周りを見渡すが、やはり人の気配はない。



何処にいるんだ、敵はどこに―――?



感を研ぎ澄ますと、次は頭上から何かが落ちる様な気配がする。


「メアリー!」

「えっ!? きゃっ!」


僕はメアリーを押し飛ばすと、その間に矢が突き刺さる。



「さっ、さっきから何よ!?」

「このままだとまずいね、んー…あっ」

「ルイス何か思いついたの?」

「まぁ、な。メアリー"悪魔のキス"って撃てるか?」



"悪魔のキス"は、ダークエルフ軍に放った"バースト・ショット"より威力はかなり低めな技である。

一応メアリーの技の種類は、いくつか把握はしてるもののどれもこれもズバ抜けた最強技ばかりである。

これが"魔族の力"と言えばわかりやすいが、この悪魔のキスは威力が低い分殺傷能力が高いので掠っただけでも出血するレベルだ。



「うん、出来なくはないけど…。ルイス、私を撫でて」

「え?! な、なんでだ!!」

「いいからっ! 発情させてよりもマシでしょ!!」

「うぐっ…しょうがないな!」



僕は理不尽ながらも、メアリーの頭の上に手を置き左右に撫でる。

メアリーは、顔を赤くした熱でもあるのだろうか? 嬉しそうに下を向いていた。


くそ、メアリー可愛い反応してくる!

これとそれはなんの、関係あるのか分からないけど許し難い光景だこれ!?


微妙ないちゃつきに矢を撃つ意味で、飛んでくる矢はメアリーに向かっていた。


「そこねっ!」


メアリーは矢を素ででパシッと止めた、その方位に止めた矢を指で回転させを弓で引き構えて魔法の"悪魔のキス"を放った。

シーンと少しだけ静寂になり、ゆらゆらと揺らぐ不規則に空間。

人の形が現れ、右腕を抑えながら現れた少女微かに苦笑いをしていた。



「くっ…まさかだとはね…。馬鹿にした報いかしらね…?」

5の再会、にしてはかなり派手だったね。実に君らしいやり方だね…アルファード・ロナ」



優しい顔でありながら非情な思考の持ち主"アルファード・ロナ"その名を口にした僕は、今更感が果てしなくあった。

けど、五年前のあの日―――を思い返せば働く思考は"復讐の一歩"だろう。

だが、そんなことをのは惜しい。

いや、そもそもの月日が流れてるんだ。"恨む"なんて既に身から落ちた錆みたいな感じである。



「あんな無能な"使い魔士"が、魔族の使い魔って…。いつまでも、あの弱虫じゃないのかしらね―――ルイス」

「生憎、元ギルメンあんたらの話を聞く耳はないんだ。切り捨てられた気持ちを知りもしないで、騎士団の街をメチャクチャにした。それだけじゃない、アルファード公爵各位を…。唯一、血の繋がりがある君のをね」



アルファード家、騎士団の街からさほど遠くない場所の地域ステラ領土を管理などをしているアルファード家。騎士団とも交友があり、隣接の国王とも仲が良かった。

だが、五年前のある日―――。



公爵の一人娘が、一家を殺害したと言う衝撃的な噂話が飛んでいた。

現在のステラ領土は、今やエルフ軍が領地として色々やってるらしい。

騎士団の街の悲劇が起きる、約一か月前の出来事であり何故そうなったのかは不明。

"真相は闇の中"とは、まさにこの事だろう。




「…私を知ってどうするの。この場で、争うつもり?」

「いや、争うなんて滅相もないが――。はしてもらいたくないからね」



僕は野生で現れた一匹のバード型の魔物を、右手で掴んでいた。

いつ、どこで、捕まえたかは不明と言いたいが、メアリーが素手で捕まえていた。

ちょうどいいタイミングで"ティマー"が出来るわけだ。



「見せてあげるよ、これが――"ティマー"だってね!」


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