第30話 心愛の後輩
俺と心愛はタックトックを撮り終えた後、シブヤの街をブラブラと見て回っていた。
そこら中で写真や動画を撮り回っている若者達に気を使いながら歩いているせいか、全然シブヤと言う街を堪能出来ていないような気がする。
「神谷さん神谷さん!!あそこに入りましょう!」
「あのビルって、若い女の子ばっかいるとこだろ」
「大丈夫ですよ。若い男の人とか若いカップルもいますから」
「おいそれ全然大丈夫じゃねえよな」
心愛の強引さに負けてしまい、渋々108と書かれたファッションビルへと入ることとなってしまった。
周りの若者達に変な目で見られないよな……。
「どのお店に入りたいですか?」
「俺に聞くんじゃない」
「だって神谷さんの目が……」
「俺の目が何だ?」
「下着のお店に入りたそうだったので」
「こんな場所で誤解を招くような事は言うな!」
心愛のバカな発言によって、周りにいた若者達からの俺へのイメージは確実に変態野郎となっただろう。
はぁ。ただでさえ年齢的にも女子高生と一緒に来ていると言う点でも浮いているのに、おまけで変態野郎とは……帰りてぇ。
「神谷さん!見つけました!」
「何をだ?」
「待ち合わせの場所ですよ」
「……は?誰と?」
「言ってませんでしたっけ?私の後輩です」
「聞いてねえよ!」
驚きを隠せないまま7階にあるお洒落なカフェへと入った。
そして店員さんに案内された先にいたのは、心愛よりもまだ幼さが残っている金髪でショートヘアーの女の子だ。
「お待たせ美久ちゃん」
「いえいえ。心愛先輩こそ、今日はミクの為にわざわざありがとうございます」
二人が軽く挨拶を交わすと、俺と心愛は美久と呼ばれている子の向かいの席に座った。
「あのぅ、そちらのお兄さんが例の?」
「例の?」
「そうそう。このお兄さんが例の神谷さん。顔はちょっと覇気がないけど、絶対力になってくれるから安心して」
「おいそこの小娘。さっきから例のとか覇気がないとか力になってくれるとか、全然話が見えてこないのだが」
女子高生二人だけで何か訳あり的な話をされ、俺は非常に居心地が悪い。
それに、何か俺にも頼ろうとしている感じがあってすごくめんどくさそうな雰囲気を漂よわせていた。
「この子は笹川美久ちゃん。私の後輩です」
「笹川美久です。神谷さんの事は色々と心愛さんから聞いていますよ」
「心愛が俺の話を?イケてる話か?」
「うーん……面白?エピソード的な感じでしょうか」
「あ……そう」
こうやって俺は女子高生の中でバカにされコケにされ、暇つぶしの道具として話のネタにされていくのか。
心愛のやつめ、俺のファンと言っときながら知り合いには面白おじさん的な感じで話をしてやがるな。
「ではお間抜け?おじさん……あ、神谷さん」
「その間違え方はおかしくね?面白おじさんならまだ許せるが、お間抜けってもう悪意があるよな?」
「いえいえただのいい間違えですよ。決して、神谷さんが私より若い子と話をしていてその顔が私と話をしている時よりも嬉しそうだから腹が立ったとかではないですから」
「もう全部言っちゃってるぞ。それに俺は全然嬉しそうにはしてないのだが」
少し空気が悪くなったところで、美久が自分の相談内容を話すと言い出し強制的に話を変えてくれた。
高校一年生ながら、素晴らしい状況把握能力だ。
「ミクの相談って言うのが、ミクがやってるニューチューブの事なんです」
「ニューチューブって、美久はニューチューバーなのか?」
「一応……登録者は全然いませんが」
「神谷さんには、美久ちゃんのニューチューブ登録者数を増やす協力をして欲しいんです!」
「え……?絶対俺には無理だろ」
俺とは真反対すぎる世界の協力依頼を、なんでわざわざ俺にしてくるんだ?
ま……まさか、結局何にも出来ない俺の事を女子高生トークのネタにするつもり何じゃ……。
「いえ!神谷さんじゃなきゃ駄目なんです!」
「な、何で俺なんだよ」
「だって神谷さん、なんだかんだすごい人じゃないですか」
「……は?」
「心愛さんがそう言うんですから間違いなくそうなんですよ」
「根拠が弱すぎんだろ」
女子高生二人からの強いお願いにより、俺は断ることが出来ず仕方なく引き受けてしまった。
ニューチューブに関しての知識など全くなく、時々寝る前にお笑いを見る程度だ。
そんな俺が一体何の力になれるのか、今の段階では全然わからん。
「そんで美久、今の登録者数は何人なんだ?」
「35人です……」
「目標は?」
「100万人です」
「……無理だ」
「いけます」
「いや、無理だ」
「神谷さん、ガンバです!」
こうして俺は、心愛の後輩で笹川美久ことニューチューバーのミクの登録者数爆上げ計画に参加することとなった。
多分……いや、絶対に無理な気がする。
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