第20話 フードコートで話し合い

 俺と心愛は今、フードコートへと場所を移していた。

 あのまま店の中で会話をしていると、他の客の迷惑になりかねなかったからだ。


 そして俺は、例のパワーストーンだけはしっかりと購入して来ていた。

 そのパワーストーンが入っている袋を大事に抱えて座っている。


 そんな姿を、真正面からじーっと見つめてくる心愛。


 なんともカオスな空間に、お互いが話出せずにいた。


 これは……やはり俺から話し出した方がいいんだよな?

 心愛もさっさと聞かせろよって顔をしているし……。


 少し緊張感が漂う俺達のテーブルの上には、お互いに購入した41のアイスクリームが置かれていた。

 それをペロリと舐め、ゆっくりと口を開く。


 「ええとだな……」

 「好きな人がいると言う事でいいんですよね?」


 俺が話し出した瞬間に、アイスを手に持った心愛が言葉を被せてきた。

 その真剣な表情はまさに、大人顔負けだ。


 これはまいったな。

 多分この感じだと、適当な誤魔化しも通用しなさそうだ。


 それに、早見ちゃんが来るまでもうそんなに時間の余裕も無い。

 ここは素直に全て話すのが賢い選択だろう。


 そう思い、心愛の質問に答える事にした。


 「その通りだ」

 「むーーーー!」

 「どうした?」

 「何でもないです!」


 心愛が頬を膨らませ、何故かこっちを睨んできていた。

 この状態は、心愛のお怒りモードが発動していると言う合図だ。


 付き合いはそんなに長くないが、この心愛は前にも見た事があったのですぐに分かった。


 何か怒らせるような事をしてしまったのだろうか。

 俺がその事について考えていると、心愛が話を続けてきた。


 「相手の人は……その、可愛いんですか?」

 「まあ、可愛いな」

 「そ……そうですか」

 「心愛よ、さっきから様子が変じゃないか?」

 「そんな事ないですよ!全然大丈夫です!」

 「本当か?体調が悪いなら早めに言えよ」


 やはりいつもの心愛ではないような気がするが、本人が大丈夫だと言っている以上、俺からはもう何も言えないよな。


 そして心愛は、さらに質問を続けてくる。


 「それで、その人とはどこで知り合ったんですか?」

 「会社の部下だ」

 「部下って……神谷さん変態です!」

 「何でだよ!部下の事を好きになったら変態なのか?」

 「たぶん……そうです!」

 「たぶんって何だよたぶんって!」


 何の根拠も無い事を言ってしまったからか、心愛が少し顔を赤らめていた。


 恥ずかしいとこんな風に顔を赤くするのか。

 まだまだ子供だな、可愛い奴め。


 俺が心愛の事をじーっと見ていると、それに気づいた心愛が素早く両手で顔を隠した。

 そんな女の子らしい行動に、少しドキっとしてしまった。


 そして心愛が顔を両手で隠したまま、話をしてくる。


 「神谷さん。私は神谷さんのファン第一号です」

 「ああ、知っている」

 「だから、何でも相談して下さい」

 「まあ、本当に困った時は頼らせてもらう」

 「神谷さんが幸せである事が、私の中では一番なんです」

 「心愛……、そんなにも俺の事を……」

 「なので、神谷さんの恋も全力で協力しますね!」


 そう言うと、心愛は立ち上がり俺に握手を求めてきた。

 その行動に何の意味があるのかは分からなかったが、求められるとやってあげなきゃと思うのが男の性である。


 なので俺も立ち上がり、心愛と握手をした。


 「じゃあ神谷さん、私はこれで失礼しますね」

 「そうか。友達と楽しんでな」

 「神谷さんも、部下の人と上手くいくと良いですね」

 「まあな。そんなに甘くは無いだろうけど」

 「そのネガティブさ、体から滲み出ているのでやめた方が良いですよ」

 「汚い分泌物みたいに言うのやめてくれないか。まあ努力はしてみるが」


 そんなやり取りをした後、心愛は友達がいる場所へと向かって行った。

 何故か心愛の横顔が、いつもより暗かったような気がしたのだが……。


 ピコン!


 去って行く心愛に声を掛けようとした時、ポケットの中のスマホが音を鳴らした。


 「何だこんな時に」


 ポケットからスマホを取り出し、確認する。


 すると、Limeにメッセージが入っていた。


 『せんぱーい♪もうすぐ着くので、入り口で待っていてくださいね♪当たり前だとは思いますけど、私より早く着いていますよね?』


 本当、相変わらずの脅迫文めいた内容だな。

 そんな事を思いつつ、返事を返す。


 『当たり前だ。1時間も前から俺は着いてるぜ」


 しっかりと早く着いている事をアピールし、すぐに入り口へと向かった。


 入り口に向かっている最中、俺はどうやってプレゼントを渡そうかと色々と脳内シュミレーションを行なっていた。


 




 

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