第4話 分団長、失格だと思うんだけどなあ

 小学校の時は、近所の子供がかたまって集団登校をしていました。先頭を歩く人は分団長と呼ばれ、必ず六年生がやっていました。

 私が五年になった時、同じ分団に六年生がいませんでした。仕方ないので五年生がやることになったんですが、その時五年生は私と、隣の隣に住むフジやん(仮名)と、四年の途中で近所に越してきたヒデオ(仮名)の3人でした。

(当時この3人でよく庭球野球などして遊んでました)


 我々は話し合いの結果、一人が五年の1年間、もう一人が六年の1年間、分団長をやり、残った一人が2年間、副分団長をやろうということになりました。副分団長というのは集団の一番後ろでみんなを見守るという役目です。

 そして私が五年の一年間、分団長をすることになりました。やることは十人弱くらいの行列の一番前に立って歩くだけなので、普段は何ていうこともなかったです。しかし、雨の日に問題が発生しました。

 学校までの距離は子供の足でも5分くらいだったけど、途中にT字路があり、直線に合流しなきゃいけませんでした。雨の日はこの直線が他の集団登校の列で大渋滞になってしまい、間に入れなかったのです。何しろ私は、あまり親しくない人とはコミュニケーションがとれない人なので、「入れてくれ」と言えませんでした。

 私は合流地点で何分間もたたずんでいました。私の後ろでは十人弱の人間達が雨の中、傘をさしながら黙って待っていました。不思議と文句は言われませんでした。みんな私の性格をよく知っていたのか、何も言わず耐えてくれていました。しかし私は内心いたたまれない気分でした。自分の不甲斐なさのために、またしても人々に迷惑をかけている。

 私は分団長をやめたくてしょうがなかった。あと2カ月、あと1カ月と、指折り数えて任期終了を待ちました。


 そして年度末の地区児童会がきました。地区児童会とは、月に一回、同じ地区の人間が集まって何やら話し合いをするものでした(大体教室一杯くらいの人数になる)。分団長などはそこで決められるのです。

 我々は先生に、来年度はヒデオが分団長になることを報告しました。するとその女教師Kは驚いたように言いました。

「え!?  みちみちくん(仮名)今年やっててんから来年もやらなあかんやん!」

 私は絶句しました。そして、本気で泣きそうになりました。

 なんで今年やってたら来年もやらなあかんのか、わからなかった。込み上げてくるものがあり、言葉なんか出ませんでした。

 後でヒデオは「あの時のお前の顔」と言って笑いました。その笑いで、私は少し救われました。

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