光の美術館
バブみ道日丿宮組
お題:光の美術館 制限時間:15分
光の美術館
何もない。それが美術館の感想だった。
「……?」
展示物というものは一周しても見つからず、おまけに客も見つからない。
しまいには入った入り口でさえわからなくなった。
呼吸が荒くなった。
「ーーお客様どうなさいました?」
「えっ?」
声に振り返ってみても誰もいない。
「ここです」
「どこ!?」
声がさらに荒がる。それぐらい実のところ切羽詰まってた。知らない場所、人のいない場所、自分の想像がいかない場所、不安は積もるだけ。
「瞳を閉じて、落ち着いて開いてみてください」
なぜそんなことをする必要があるのかちっともわからないけど、慌ててるのは間違いなかったので瞳を素直に閉じた。
深呼吸を何度か繰り返し、ゆっくりと瞳を開けると、
「わぁ……」
広がったのは光の楽園……そう呼べそうな絶景だった。
光が作り出した虹が物体化したように展示物がいくつもある。
「どうですかな、お客様。ご満足頂けましょうでしょうか?」
声の主がやっと見えた。
「あなた……ひょっとして人じゃないの?」
それは童話世界でみる小人だった。しかも色とりどり変化してる。光が生き物になってるかのようだ。
「そうです。ここは特別な美術館」
特別……。そういえば、ここに入るのにお金を払った記憶はない。
……学校の帰りにふと気になった小道に入ったという記憶はあるのだけど、建物に入ったという感触は残ってない。
「どうしてここに?」
「貴方様を実のところ待っていたのです」
「私を?」
どうしてだろう。首をかしげた。
「ここは昔からある美術館でして」
小人は私の身体を登り、肩に乗る。
「お客様は選ばれたのです。次の館長に」
「えっ? なんで私が?」
「この場所に入れることが条件でして」
「でも、入ろうとして入ったわけじゃないよ?」
それに入りたいとも思ったわけじゃない。
「ここは特別な血を持った方が入れる幻想の美術館でございます」
ゆっくりと、小人は私に昔話を始めた。ここがどうして生まれたのか、そして先代という血がどういった存在であったかを。
光の美術館 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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