因果

バブみ道日丿宮組

お題:部屋とYシャツと花 制限時間:15分

因果

 あなたに謝罪の言葉を伝えたい。

 けれど、あなたはもうこの世にはいない。

 この世界に私だけを置いていってしまった。

「……」

 部屋に閉じ込められたような生活を私はしてる。親戚の喧嘩が毎日壁を伝って聞こえてくる。

『あの娘をどうする?』『施設に預ける?』『病院に送る?』『家に閉じ込める?』

 あぁどうしようもない大人たちだ。

 あなたがいてくれればこうはならなかった。

 どうして……どうして行ってしまったの。

 あなたが残してくれた花のペンダントは枯れることはないけれど、そうじゃない。そうじゃないの……。これを作るためにあなたが死んだというのなら私は欲しくない。

 ずっと側で私を優しく包み込んでくれるあなたが、あなただけが欲しい。

「……はぁ」

 何度も何度も何度も何度も思考しても結果は変わらない。現実が重くなるばかり。あなたのことは忘れなさいと親戚はいうけれど、忘れられない。

 誰にも必要とされなかった私の負の才能をあなたは喜んでくれた。怪我しやすいから可愛いと。あなたのくれたYシャツを赤く染めてもあなたは怒らなかった。笑ってくれた。

 その笑顔を今はとても見たい。

 喧嘩したことを謝りたい。私が悪かったって。私が無理を言わなければ良かった。私が事故にあえばよかった。怪我をするのはいつも私であったのに、どうして命を神様は奪うの?

 世界は平等ではないのは知ってたけど、あんまりだよ。

 私たちが何をしたっていうの……。


 ベッドの上で多重質問のループに囚われてるうちに私は眠ってしまった。

「……?」

 起きた私がいたのは知らない場所だった。

 ぬいぐるみがたくさんあって、その一つはまばたきをしてた。

「起きたの?」

「あなた誰?」

 それはぬいぐるみというか人形のような少女だった。

「わたしはあなたの遠い親戚。あなたをもらったの」

 もらった? 私は売られるようにでもなったのか。いや……そうなるのもわからなくもない。だとしてら、ここはどこかの研究室だったりするのだろうか?

 そのわりにただの畳敷きの居間に見える。

「警戒しなくてもいいのよ。あなたは何もしなくていい。あの人のことを思い出さなくてもいいし、思い出してもいい」

「な、なんで遠い親戚のあなたが彼のことを?」

「彼はわたしの従者であなたを見てもらってたの」

 いったい彼女は何を言ってるのだろうか。従者? つまり主? 見てたってどういうこと?

「大丈夫。時間はいくらでもあるから」

 まずはと、彼女は、

「あっ……」

 私を抱きしめた。


 それは長らく忘れてた人の温もりだったーー。

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因果 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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