2-8 再会
大澤は落ち着かない様子でずっと待っていた。
ヒルトンと言っただけでわかるかな?いつもラウンジで待ち合わせしてたから大丈夫だよな。そろそろ一時間になろうとしていた。大澤は甘目のカクテルが好みで、この日もラムバックを注文してずっとそのグラスを見つめていた。いつもはグラスが汗をかくことはないが、今日は飲むために注文したというより落ち着く為に目の前に置いているだけだった。
8時前、見覚えのあるシルエット。。。さとみ。。。
思わず立ち上がり右手をあげた。
「ごめん、待たせちゃったね」
そこには何も変わらないさとみの笑顔があった。
大澤も涙をこらえ笑顔のまま人目も憚らずさとみを抱き寄せた。
さとみは自然に大澤の腕の中へ
「ごめん、つい」
「いいの、嬉しいから」
少し沈黙が流れ、テーブルを挟んで向かい合いお互いをぼんやり眺めた。
おそらくほんの一瞬のことだった。
「さとみ、、、ネックレスしてるんだな」
大澤は感極まっていたがなんとかこらえながら思い出のネックレスに視線を向けた。
うん、うんと頷きながら、さとみも大澤の胸元を確認した。
見覚えのあるチェーンが少し覗いているのが見えた。
「あなたもしているの?」
うん、うん、と頷きながら
「ずっとしてる」
「長持ちするのにしてよかった。。。」
涙を溜めたまま笑顔のさとみは、真っすぐに大澤をみつめていた。
「何も聞かないんだな」
「一言だけ言っていい?」
「うん」
「折り返しの電話、、、三年半はちょっと長過ぎだよ」
「それだけ?」
「うん、それだけ」
大澤は自分の愚かさを噛み締めた。独りよがりもいいとこだったと自分を責めた。あの時さとみに病気のことを正直に話すべきだった。自分の間違った思いで大切な時間を別々に過ごしてしまったと後悔していると、、、
さとみが
「ね、お腹空いたね」
と、微笑んだ。
大澤は今まで我慢していた感情の防波堤が一気に崩壊するのを止められず、周囲を気にすることなく大粒の涙を流した。
雪解けの季節 ~心の和解~ 向井慶太 @TrySmartLife
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。雪解けの季節 ~心の和解~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます