「アイツの犯した罪」2021年5月29日夜②

この一連のことに関して、松井さんがぼやいていたのを思い出した。


「関わってきた中で今回の事例は、酷い方の分類というか1番最悪な事例らしい」

「松井さんがそう言ってた」


『マジで?そんなに?』


「結婚詐欺の亜種として考えてると、被害額140万越すから地方裁判所案件になる」

「簡易裁判所では、受け付けれない案件」

「詐欺として行動するとして、個人情報が欲しかった」


『今、彼が洗濯物、干してくれてるのを見てると、泣けてくる』


「そっか、今泣いちゃダメ、大丈夫か?」


『どうしよう、、、涙、止まんない』


6年間の信頼の裏切りだもんな、、、すぐには、無理だろな、、、

俺も最初はそうだった。でも被害総額を見て、一気に憎悪に変わった。


「バレちゃうよ、こらえて」

「すべて解決したら、一緒に泣こう、今はガマン」


『何とかこらえたから、大丈夫』


「一緒に頑張ろう」


『舞子もいざっていうときになったら、かなり落ち込むかも?』

『立ち直れるか、心配』

『私自身、如月の元夫に当てつけたかったんだ、、、それがこうなるなんてね』


「そっか俺は大丈夫、舞子のことしっかり支えたって」

「最終的な方針は、俺の家に2人来るでいいの?」


『舞子と2人て、動くことをまだ決められない』

『衝撃が大きすぎて、受け止められない』


「俺もだけど止まらない、前進あるのみ」


『舞子がポツっと言ったんだよ、、、前の生活に戻るの?って』


「母さんの気持ち的に、こんなことが発覚して今まで通りにはいかんやろ?」

「俺は働いてるし、舞子もバイトに大学、母さんも働いてる」

「もう少しでみんなで酒だって飲めるし、愚痴だっていいあってもいい」

「だから前の生活には戻らないと思う」


『今のままじゃいかんのは頭では分かってるけど、気持ちがついて行かないんだよ』

『彼の母の顔がチラつくんだよ』


「アイツのしたことは犯罪だよ」

「265万、地方裁判所案件、それだけ大きいことをしたんだ」


『彼が裁判沙汰になったら、どうなる?会社はクビ?』

『前科がつくってことになる?刑務所に入る?』


「如月さんに完済して終わりか、執行猶予がつく形じゃないかな?」

「松井さんがそう言ってた」


『まだ、彼に対しては愛情があるのもあって、、、』

『今、すごく、戸惑って、混乱している状態』

『作業部屋に逃げ込んで、泣きながら、LINEしてる』

『舞子が気遣って、タオルを持ってきてくれた』

『多分、この話、電話だと、会話にならんかもしれない』

『マイナスの感情が高ぶると泣きすぎて、ぜんそくみたいに咳が止まらなくなる』

『それがすごく苦しくて、しんどい』


その状態を聞いて松井さんから言われてたもう1つの案を出すことにした。

けど、これはかなり難しいと思う。


「誓約書を作って、書面で解決する方法もある」


『誓約書ってどんなの?』


「やったことを認めさせる文を書いて、返済方法を書いて、それを守りますって紙」

「それを守らなかったら、こっちはこうするってのを自分らで取り決めて、、、」

「例えば、守らなかったら法的措置を取りますって約束する紙」

「まとめて誓約書ってもの」


『 署名させて、印鑑を押すの? それとも指紋?』


「署名と印鑑を押す」

「誓約書で進めるわ」

「俺、母さんや舞子のことを考えてやれなかった」

「俺、一人で走っちゃってたわ、、、ごめん」


『しばらくは、彼に隠れて泣く日が多くなると思う』

『時々、情緒不安定な時があって、ちょくちょくこっそり泣いていることがあるから、あまり不自然には思わないよ』


「バレたかと思ったわ、、、誓約書で進めるね」


『誓約書でお願い』

『裁判は、私には、ハードルが高すぎる』


「分かった」


『誓約書だと、第三者が入るの?』


「しっかり作るなら、弁護士か司法書士に依頼する」


『しっかり作ってもらって、お金はかかるだろうけど』


「第三者がいなくてもいいけど、今回は額が額だからね」


誓約書を作る上での一番の障害がある。それが俺が難しいと判断した理由。


「誓約書の場合、アイツがやったことを認めることが条件」


『私の予測、シラを切るか、誤魔化すかもね』

『それか、機嫌が最悪な状態で予測不可能』

『彼がイラつく時、正直、怖いだよね』


やっぱり母さんもそう思うか、、、

アイツの性格的にそうなる可能性大だから、最初から訴えようと思った。


「怖いだったら、誓約書交わした後、2人はどうするの?」

「その状態で、アイツと一緒に生活できる?」


『彼の態度があんまりだったら、裁判沙汰にしても構わない』

『そこでバッサリ縁を切る』


「誓約書交わしてその後の生活で判断?」


『その時は、米美に裁判にしてって知らせるわ』


「誓約書の時にシラを切り続けて認めない場合は?」


『裁判沙汰でいいよ』

『どっちにでも転べるように進めていって』


「分かった」

「誓約書を作るには、罪を認めないことには作れないからね」


『どこで誓約書って、作るの?』


「俺とアイツと弁護士で、弁護士事務所で作る」

「もし認めなくて裁判沙汰になる場合でも、身柄は自由」

「まだ裁判中なら犯人としては扱われないから、自由らしい」

「正直そこが怖い、どうなるか分からないから」


『認めなかったら、彼の母や姉にLINEして、彼のやった事、ぶちまける』

『そうだね、親族会議でもしてもらうわ』

『母の面倒と生活費はどうするとかって、きょうだいでゴタゴタしてるのに』



どうなることやらと、俺はライン画面を見つめた。

けっきょくは裁判になるとは思うけど、今は両方いけるように動こう。

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