気まずさの海路

せせらぎ大學(旧 中洲ノ粤犬)

第1話

ものの考え方の波が次々と襲い来るこの世の中で生きるためには、それなりの決心が必要だ。

そう思われたくないのにそう思われた時。

また、肯定してほしいのに否定された時。

下が見えない階段から突き落とされたような精神的ダメージを被ることがある。


例えば、ジェンダーレスやLGBTの認知を進めようとする動きが活発化することで、身近に起こる悩みの種。


俺には、武者に憧れ、銀杏髷を結うために髪を伸ばしていたことがあったが、それには心身共にはらわたが裂けるほどの苦痛を伴った。

伸び始めて紐で括らなければならなくなる程までに、幾度となく、「オカマ」「おとこおんな」「キモい」と、道行く知らぬ老若男女に揶揄され、家に帰り、アトピー性皮膚炎を患っている身でそれを思い出す度に苦痛で皮膚をかきむしり、裂け目を作り、血を流した。

気にする質は幼い頃から変わらず。


LGBTの人達を否定はしないが、自分は男らしくありたく、いつもそれに向かって前進しているつもりだ。

それを決めつけで揶揄する人間達。

その世間の波は、とても煩わしく感じてしまう。


このような世界になって、人間的に好きな人(特に同性)に好きだと言えなくなった。

変に捉えられたくない(性的に好きだと思われたくない)からだ。

「俺はお前を人間的に好きだよ。」と、言うのはなにかよそよそしい。

親しみから遠ざかっている気がする。


そのような理由から、自分を守るために色々と気を回さなければならなくなり、気軽さが消え失せた。

俺は神経質に、堅苦しい言葉遣いをするようになり、そのような面でかなり衰弱している。


わざわざ口に出して好き勝手に揶揄する暇があるほど、彼らは暇なのだと思う。

そんな人間がのさばる世界で生きるには、更なる対策が必要な気がする。






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