騎士団追放
「よく来たな。えーと……リヒト、か」
金色の髪を撫で付けた壮年の男性──リーンハルト様は部屋を訪れた俺を青い瞳で
すぐに俺に視線を戻すと、にこりと微笑んで。
だがその目が、笑っていない。
リーンハルト様の左右に控える彼の補佐2人は半眼で俺を見ている。
「リヒト、お前には本日を
リーンハルト様が、言った。
でも俺にはその言葉の意味が分からない。
理解できない。
納得できるはずもない。
「なぜですか」
俺はリーンハルト様に
「自分は一定の戦果をあげています。今日も何体もの魔物を倒し、レッド・ドラゴンを討ち取りました。土地の浄化を行う闇払いにこそ参加できませんが、
「異議は認めない、と言ったが?」
俺の言葉を遮り、リーンハルト様が言った。
冷めた声音。
リーンハルト様は深い溜め息と共にデスクに前のめりになり、
「
ここで血統の話が出てくるのか。
生まれだけは努力ではどうする事もできない。
与えられた属性だって。
だが俺が隊列に加わらずに
俺の闇属性はこと魔物に対しては光属性に劣らない威力を持つ。
対して光属性は強力だが同時に闇の影響を受けやすいから一度定めた自陣から大きく動く事はできない。
それを補完するために前の総団長だったヴィルヘルム様が俺に
「自分の
「チッ」
あからさまに舌打ちを漏らすリーンハルト様。
だがそれは俺の
「あの老いぼれの名前を出すな。ようやく団から追い出したのだ」
「団から……追い出した?」
俺は思わず呟いていて。
それにリーンハルト様はにやりと笑った。
先程までの張り付けたような作り笑いではなく、心の底からの笑み。
弓なりに細く歪んだ目が
「ああ、そうさ。表向きは総団長としての責務を
リーンハルト様は
困惑する俺にむかって
「目障りだったんだ。老いぼれのくせにいつまでも私が座るべき総団長の座に居座り続けて。そして選ばれし光の使い手は2人もいらない。そうだろう?」
リーンハルト様は左右に控える彼の補佐に視線を交互に送った。
それに大きくうなずく補佐の2人。
リーンハルト様は2人を見ると椅子に深くもたれる。
「だから王国議会に掛け合ってあの老いぼれを失脚させたんだ。あの老いぼれは国王に忠義を誓っていた。その命令通り今頃はこの国を出ているはずだ。無様なものだよ。聖騎士団総団長の肩書きを持っていた者が国を追放されたんだからな……!」
リーンハルト様──いや、リーンハルトがそう言ってけらけらと笑っている。
ヴィルヘルム様が退団されたあとの話は聞いていない。
だがまさか国を追放されていただなんて。
強く握り締めた俺の拳がわなわなと震える。
「そしてその最後の置き土産がお前だ」
リーンハルトは
「このまま騎士団の
リーンハルトの言葉に俺は目を丸くした。
今日の戦場での事を思い出す。
『「いつもより剣を向けられ過ぎじゃないか?」』
『だって今のですでに13回目。ちょっといくらなんでも多すぎる。』
戦場で感じた違和感。
あまりにも多かった味方からの攻撃。
それがまさか本当に俺の命を狙っていたものだったなんて…………。
俺は
「分かったかね。聖騎士団にお前の居場所などとうにないのだよ。
リーンハルトが、言い放った。
その補佐2人が意地の悪い笑みを浮かべて俺を見ている。
よくよく見ればその2人は────今日の戦場で俺に剣を振るった騎士だった。
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