スノーホワイトにさよならを

野口マッハ剛(ごう)

さよなら

 吐く息が白いのに温かいなんておかしな表現じゃないか。帰り道の途中で、貴女は急いだ様子で「バイバイ」と去っていった。あれから半年経つけど、もう貴女は姿を見せない。


 オレはこの半年を、貴女への片思いで退屈だけど幸せな時間の中に居た。今は雨が降ってムシムシとしている。あれが最後だったのかい? オレは、あの時に「バイバイ」と言えなかった。


 オレは夢を見ている。また貴女に会えるのを待つ。街の中を傘をさして貴女の姿を心の中では探している。さよなら。そんな言葉が頭に浮かぶ。そんなことはオレは信じない。雨が何も言わずに降っている。


 貴女は、そういえばスノーホワイト色の上着を、いつも冬には着ていた。また、会えそうなのに。帰り道をひとりで歩くオレ。季節は冬が訪れる。貴女の居ないひとりぼっちのスノーホワイト。


 あれから、貴女への片思いの火は消えないまま。けれども、貴女はやっぱり来ない。さよなら。貴女の笑顔がオレのとなりにはなかった。貴女の姿をまだ心のどこかで探している。


 スノーホワイトにさよならを。

 冬のある日に貴女はオレの目の前に姿を現した。そのかわいい笑顔は相変わらずに。オレは夢を見ていた。それは、貴女が居なくなった夢を。けれども、今こうやって貴女はオレの目の前に居る。


 あの日のスノーホワイトにさよならを。


 吐く息が白いのに温かいなんておかしな表現じゃないか。でも、今ならばわかる。オレは貴女と帰り道を一緒に歩く。片思いだけど、貴女への愛は変わらない。


 スノーホワイトにさよならを。

 悲しかったあの日々にさよならを。

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