端編集~永劫と膨大のデータ~
夏眼第十三号機
奇跡中毒者
古来より、人は神秘を求める生命体だ。
ある日の事、一柱のとある女神が堕天した。
その女神はあろうことか下界に住まう人々に、神々が成し得る『奇跡』を与えてしまった。
その奇跡は、周囲の人間社会の発展に大いに寄与した。
女神が、死んだ。
音もなく、死んだ。
皆に愛でられ、死んだ。
しかし、困った。彼女が居なくなってしまい、奇跡の供給が止まってしまったではないか。これでは奇跡の行使ができないぞ。
人間たちは必死に、女神が与えた奇跡についての研究を始めた。
幸いにも、道しるべはある。
彼女の遺した奇跡だ。
それを辿っていけば、いずれ奇跡の実体を掴めると、新たな奇跡を拝めると、研究は幾年にも渡った。
もう一度、あの甘美な奇跡を貪りたい。
人々の意識は今、一つとなり神秘を網羅せんとしていた。
しかし、心配だ。
いずれ全ての真実に気づいた人間が、この世界の破壊を目論むかもしれない。
この世界はハリボテ。ボクの為の箱庭。
だから、女神の用いた奇跡も、所詮ボクの世界のシステムに則ったモノに過ぎないんだから。
人間もバカじゃない。いずれ気付く日が来るだろう。
そう、神秘の滑稽さに。
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