世界がもし全てが生死によって繋がるとしたら

カイ サン

第1話  事故そして死後の運命

二十二世紀のとある会社。

春の夜桜が吹く中、東京の三階建て子会社は今日も街頭が照らしつくせない壁角にある小さな桜を照らしていた。

全ては日常に終わり、社員だけが夜遅くまで仕事をしている会社内。

“咲さん、今日も仕事ですか?”

“ええ。まあ…”

茶色い長髪にすらりとした社員服、今日も私は仕事である。

そして今困った顔をしている同じ社員の女性は笛山咲、社員として年上でもあり。いつも沢山の仕事を持たされている。

昨日も、今日もこうして夜更かしで仕事をしていたのだ。

人、として彼女はとても良い見本である。コツコツるからこそ、仕事の大変さを知る。

そんな彼女を私は放っておけなくて夜遅くまで一緒に手伝っていた。

“頑張ってくださいね!昨日の資料全部やってあげましたから。”

“か、かたじけない。”

“良いのよ、フフフッ。”

友達。それは私と彼女の間でつながれるもので有り義務とも思う。

…会社の同僚は全て友達。

そういう甘い性格から。

会社ではお世話さんと、全員が私をそう言う。

困った人を放っておけない。

人が面倒ごとになっていたら首を突っ込んでしまう。

そういった性格が日々の出来事を他人とは少し違う感じで受け取ってしまう。

“じゃ、お疲れ!私、コンビニ行ってくるね。明日は休日だから、咲さんも思いっきり寝られるよ!じゃあね。”“いつもありがとうだす。”

スキップしながら自転車をこぎ、それからいつものコンビニへスタッっと降りる。

私は、一日を終えたら決まってコンビニの前でたむろする。

女性が一人危ないと言われるが、今の所何も起きていない平和な夜々。

だが、今晩。

少々違った。

“だーかーらー!私はそっちの遊園地生きたかったの!”“ハアー!?おめえが先に行きてえ言ったから連れて行ったんだろうがよ!今更何だっていうんだよ!”

騒がしい口喧嘩。道端の道路上で二人の若い夫婦らしき人物が喧嘩している。

“いいな…私もいつか彼氏が出来たらな。”

深夜のせいか、私は少々寝ぼけていた。

どうせチャリだしと思いほろ酔い酒をそのままがぶ飲みし、思想に浸っていた。

正直、彼氏を作るほど自信がない。

むしろ裏切られる方が怖くて誰も信用など出来はしない。

長年社会に生きていたから分かる…ぴったりの彼氏と彼女はいかに難しいかと。

“ゴー!”遠くからゴミ収集トラックがやってくる。

“あー…車の邪魔になるところに丁度っ立ってて怒られるゾーってあれ…”

気のせいなのか、カップルは喧嘩が次第に激しくなっている。

“パン!”

鋭いビンタ音と共に女性の罵声が聞こえる。

“てめえ!叩きやがったな!”

“放して!”

喧嘩は遂にとっ掴み合いになり始めた。

アルコールのせいなのか?それとも増悪のせいなのか。

二人には何も聞こえていない。

例え死神が彼らに向かって笑っていてたとしても。

“ブオオオー!!”“やべっ!!”“キャーッ!”

もう遅い、居眠りしている運転手には何も聞こえない。

…助ける!…

反射的に動いてしまった体は、止まらなかった。

片足でほろ酔い酒の缶を蹴り上げ、その勢いでターゲットをロックオン。

すかさず二人に激励のタックルをかます。

“ドシャ!”

痛みは無かった。

ただし音はした。

それはまるで無数の蒸気が体を抜けるように、魂だけがこの世から消えてしまった音であった。

…救えて良かった。…

死は早かった、けど人生初のタックルの方がもっと早かった。

最後はそれだけだった。

~プログラムセッティング完了いたしました。貴方の死と引き換えに、二人の命が救われました。これより神殿、サファイアの元にお送りいたします。善には善を、悪には罰を。そなたの因果、次世にて償うべし。清には神の御加護、汚には悪魔の呪いを。全ては自己の因果で有り、運命である。当世受けた苦しみ、当世受けた幸せ。次世にて全てつながりたし。~

疲れ切った白き光。

私は目を覚ました。

“....此処は…”

黒い霧が周囲を覆う。

巨大すぎる空間。

そして、何故か生気を感じなかった。

暗闇の恐怖、自分が何処にいるのかまるで分らない。

“何処だ!此処は…”

慌てて空を掴もうとするものの、手は無かった。

それでもっと訳が分からなくなった。

…自分は死んだのか?そうなの?…

心が問う愚問に自分は長々と考えてた。

“死者の道だ。”

死の気配をした黒い服の下。

まるで、すべての事を理解したような鋭い瞳がいつの間に私を睨む。

“ハッ!す、申し訳ございません。わ、私は今何処に…”

…人だ、何者かが頭上で話している!…

恐怖。それは有る。

ただし、何者かがこの孤独を分かち合ってくれるという謎の安心感がもっと有った。

“此処は神殿。いや、旧神殿というべきか…。”

声は続いた。

私の魂は、この漆黒の空間内で無意識に浮かんだり沈んだり。

この空間ではどこが上でどこが下なのでさえも自分では区別できない。

ただ困惑と、迷盲が続いた後彼が再び口を開いた。

“私が誰だか、此処はどこだか。そういう問題は考えんでもよい。”

見えないまま、何者かの気配がする。

それだけで正直不安で有った。

“私は、そなたを送る者。此処に長居はせん。”

美しい声、ただ冷淡で無情だ。

人なのか?それとも私の知らない聖物なのか?

“…神様ですか?…それとも悪魔ですか?”

この世界では私は意識しかない。

質問するなと言われても、魂の声は嘘を隠せない。

隠せない物は意識として伝わり、流れる。

そして今彼に伝わる。

“どちらでも構わない、ただ少なくともお前の次世之運命を掌る程度の者だ。”

彼はそう言った。

声は分からない、ただその溢れ出る意だけで強さを感じた。

ただそれだけで、私は言葉を押し返された。

道が進む。

黒い世界の中、いつか私は自然と彼に付いていった。

朦朧とする意識の中、隠れながらも暗闇に自分と同じ白き姿が感じる。

“あ、あの…”

“…”

人が増えて安心したのか、私は話をしようとした。

“魂って白いんですね…”

“ああ。”

“私、次の世では幸せに暮らせるのかな…”

“秘密だ。”

“教えられない…ですか…”

“ああ。”

静かな通りの道は、いつの間に無音で白色に包まれていた。

何千,何万、何十万。数えきれない意識が、この道を歩いている。

“人って、こんなにも死ぬんですね…”

“ああ。”

眼ではない目で白光を追いかけながら、静かに伝える。

“何処へ行くんだろう。”

“行くべき場所だ。”

“そうですか…”

“うむ。”

“…”

会話は長く続かない。

死神の心なのか、それとも私の不安なのか。

私は分からない、なぜここに魂がすべて集まるのか。

なぜ、自分は連れて行かれるのか。

ただ、この眺めを見て無常に悲しくなった。

魂は嘘を附けない、寄らせもしなければ、壊せもしない。

だから、もっと悲しかった。

“お前は優しい子だ。”

“え?”

何故だろう。初めて、笑みという物が彼の体から伝わって来た。

冷たく、かつ親しみが有った。

“此処に来る者は、大抵、憎しみと増悪に持ちている。多かれ少なかれ、すべては自分の為に。後悔の為の言い訳を死神に言う。”

彼の声は冷淡だが、惜しみも感じられる。

黒き煙に満ちた白栄の道、此処には日は無く無念しかこうして黒い煙になって転生と共に散って逝く。

そして、私は彼が案内したとおりにその前に立った。

“ゲート…?”

初めて頭に浮かぶ言葉に私は、戸惑った。

“此処は転生門通称転門だ。これからお前は何処かの所に行く。吾とももお別れだ。…質問有る…か?”

門の前で彼はそう言った。

気のせいだろう、隠蔽の気持ちを彼の言葉から感じた。

“なんか早死にしてすみません…”

転門の前で私は笑った。

所詮は一生の如き。

心を入れ替えねば未来へは進めない。

“送ってくれてありがとうございます。”

そう言ってお辞儀をした。

涙が有るなら、一滴は頬を滑って落ちたのではないのだろうか。

“…ありがとう…それだけか…”

彼は少々黙った。

“これ程正直で感謝深い魂…清らかだ…”

彼はそう言い、初めて私に触れた。

手は冷たく、鱗のような黒い鎧に包まれてた。

“未来は様々だ。例え苦難が有ろうとも、それを乗り越えれば上を取れる。そなたに加護を。”

彼はそう言い私の頭に額を着けた。

“へっ?”

温かみを感じ正直驚いたが、別れだと知るとなんとなく寂しかった。

“次世は好きに生きるがいい。誰もお前を止せることはできないだろう。”

彼はそう言い私の背を押した。

…全ては、終る。全ては希望へと繋がる。…

私は当時そう信じ切っていた。

が、後になって分かった。

これは全て三千万年前のとある陰謀だったと。

神へとの道、死から始まった全て。

続きは

第二話 

    神殿の乱と心の違い

まで。

~世界がもし全てが生死によって繋がるとしたら~

一話最後までお読み頂き誠に有難うございました。


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作者からの一言。

ラブストーリーっぽくてさーせん。※(土下座。)


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次回6月9日00:00

にれんちゃん

ううううっ!

なんでもございません。少々胃が。汗。

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