Koruseit world online〜魔力特化した私は体力10しかありません なので幻術使ってどうにかしたいと思います〜
ゆうらしあ
非現実への誘い
第1話 プロローグ
「ん〜!今日も疲れた〜!」
お風呂上がりに、ベランダに出て背伸びをしながら私は言う。
「ふぅ。」
ブラック企業に勤める29歳OL 四月一日 春(わたぬき はる)は、今年誕生日を迎えたら晴れて30代になる。
学生時代にモテた私だが、都会に住むようになって9年、1つの出会いもない。毎日が仕事。休みの日は疲れすぎてずっと寝ている。親に彼氏の1人ぐらい作れと言われ、婚活をしてみたが全敗。
そりゃそうだ。こんな、クマが酷くて髪がボサボサな女誰も見向きもしないって。
プルルルルプルルルル
お、就職してから友達から遊びの電話が来ても仕事で行けなくて、連絡も無くなった私に電話とは。珍しい。
ピッ
「あ、ねーちゃん!元気してた?」
「なんだ弟か。まぁ、今は仕事という名の地獄が終わってお風呂から上がったとこだ。」
まぁ、私に今更友達からの電話なんて来ないか。
私は1人で落ち込む。
「あー…お疲れ。まだあそこで働いてたんだ?」
「今はどこも就職難だからねー。そうそう辞めれないよ。」
「そうなんだ。俺も気をつけて就職先見つけるよ。」
弟の名前は夏樹(なつき)高3、卒業したら就職してお金を貯めて旅に出るらしい。夢があるってのは良いことだよ。
「フッ!」
「今なんで鼻で笑われたの…? それよりもねーちゃん!」
「何よ?」
「また母さんに彼氏作れって言われたらしいね!」
「◯すよ?」
「まぁまぁ、落ち着いてよ。そんなストレスが溜まっているねーちゃんに朗報!」
「朗報…ね? 何? 良い男でも見つけたって訳?」
流石に弟と同じくらいの年は無理なんだけど。そんな事を思っていると、
「チッチッチッ、そんなもんじゃないよ! なんと! ねーちゃんが好きそうなゲームを見つけましたー!!」
パチパチパチパチパチ
「はぁ。」
「あれ嫌だった?」
「……どんなゲームよ。」
「そうこなくっちゃ!! そのゲームの名は!『Koruseit world online』!!」
「コルセイトワールドオンライン?」
「うん!パッケージに『生きる為に何をする?』って書いてあって、生き物と行動するみたい。」
「へー。」
「今癒しとか欲しいでしょ! どうせ!」
「うるさい。死◯。」
タンッ!
私は電話を切った。
数日後。
ピンポーン。
「ちわー、宅急便でーす。荷物ここに置いてきますねー。」
「買っちゃった…仕事で時間ないのに…。」
私は1人、落ち込む。
「まぁ、買っちゃったもんは仕方がない!早速やってみよう!」そうすると私は段ボールの中から物を取り出す。
(小学校の時以来のゲームね、勉強とか仕事が忙しくてやってなかったからなぁ。何気楽しみかも。)
そう思いながらゲームを取り出す。パッケージが出てきた。
『Koruseit world online 生きる為に何をする?限定された時間で何をする?癒しと刺激を貴方に。』
……良いね。
私はワクワクしながらパッケージを開ける。
USBの様な物があった。
は?
私はスマホで「Koruseit world online」と改めて調べる。
「VRゲーム?」
数日後。
「ちわー、宅急便でーす。ここに荷物置いていきますねー。」
とまたそこに段ボールが置かれる。
「夏樹の奴!VRゲームならそう言いなさいよね!」
VRゲームとは何か知らなかった私は、調べた。仕事中にトイレに行きます。って言ってまで徹底的に調べた。
調べた結果、VRゲームをするにはそれ専用の機器が必要だった。それはヘッドバンドの様な形をしていた。
(くっ!夏樹がこんなゲームを勧めなければ、私の食事はもやしにならなかったのに!)
私は心の中で夏樹を呪いながらも、ゲームの環境を整えた。
数十分後。
よし!できた!
ブーーーン
『Ready Go!!』
女の子の様な声がした。
「おぉ、なんかテレビで見る宇宙ステーションみたい。」私はそう思いながら周りを見る。
「あ、あそこに誰かいる! 行ってみよう!」
そこには黒髪、ショートヘアーの和服の美少女がいた。
「初めまして。私の名前は唯(ゆい)。日本サーバーへようこそ、四月一日 春さん。」
その子は近づくとより綺麗で、まさに人形の様な美しさと言えばいいだろうか。すごく美人だった。
「おぉ、すごい。これがVRなの?」
私がそんなお婆ちゃんみたいな事を言うと、
「ふふっ。驚かれるのはまだ早いと思いますよ?ここはまだ世界の入り口。Koruseit world onlineの世界には、まだ入れていません。」
と言ってきた。
「なるほど。じゃあ私は何でここに?」
もうやるなら早くやりたい。私の身体がムズムズする。
「はい。此処では四月一日 春さんに、ゲームの中でのユーザーネーム、パートナーを選定、見た目を決める質問をする所になっております。その為、VRゲームに入る前にはこの様な場所で、人工AIが情報を整理し、プレイヤーに不備がない様、監視しております。」
「ほうほう。最近のゲームは進んでるなー。ところでパートナーの選定って?」
「はい。パートナーの選定とはKoruseit world onlineにおいて、自分と一緒に生活、冒険のサポート等を行ってくれる数百万からの生物から選定されるものになっております。」
「数百万!? そんなにいるの!? 」
「はい。地球上にいる生物、また空想上の生物等といったものまでご用意させていただいております。」
「すごい!! なんか久々にワクワクしてきた!!」
「それはよかったです。」
唯がニコッと笑う。
「それではまずゲームの中でのユーザーネームをお願いします。」
「じゃあ"スプリング"で。」
まぁ簡単な話、"春"を英語にしただけの名前だ。昔からゲームをする時はこれだった。
「はい。ユーザーネームは"スプリング"で本当によろしいですか?」
「はい。」
「分かりました。ではパートナーの選定の為、これから質問をしていきます。あまり悩まず答えてください。」
「パートナーの選定って、私が決めれる訳じゃないんだ?」
てっきりこの中から選んでくださいみたいな、そんな感じだと思ってたんだけど。
「はい、私がその人に合った生物を選ばせてもらいます。また、その質問によって見た目もとても変わりますので現実世界との差異にお気をつけください。」
「なるほど…。」
私に合ったっていうのが良い…。私は身体を震わせる。
じゃあ、種族が変わったりとかかな?私に牙が生えたり、尻尾がついたりとか?悪くない。
私はニヤリと笑う。
「どんどん質問して! 早くゲームしたい!」
「かしこまりました。それでは貴方は何故このゲームを始めようと思ったのですか?」
「え、癒しと刺激を求めて…。」
「もっと具体的にお願いします。」
「……仕事で上司からの説教がうるさい、親からの彼氏をつくれコールがうるさい、それで婚活に行ってもクマが酷い、髪がボサボサで全敗。もう本当にいやだ!! だから私は癒しや刺激が欲しい。もう1度人生をやり直すなら、現実の人生とは違うハチャメチャな生き方をこのゲームでしたい。」
私は現実での鬱憤が爆発する様に、早口で全部言い切った。
「ふふっ。なるほど、では貴方にはこのゲームが合っていると思いますよ?」
唯がニコッと笑う。
「そうだといいんだけど…。」
私は呆れる様に言う。
「ふむふむ。貴方にはこの子が良さそうですね。」
唯が空中にパソコンの様なものを出し、タイピングする。
「決まったの?どういう子なの?」
「それは、ゲームが始まってからのお楽しみですね。」
まぁ、いいか。そっちの方が楽しめそうだし!私が目を爛々たさせていると、
「では次に職業を決めていきます。」
「職業?」
「はい。職業とはこの世界で重要なものとなってきます。1度決めると変えられないのでお気をつけください。」
「職業は決められるの?」
「はい。決められます。職業には大きく戦闘職、生産職、特殊職と分けられます。詳細はそちらをご覧ください。」
そう言われると、私の目の前に職業欄というものが出てきた。
「冒険者、剣士、武闘家、僧侶。鍛治師、建築士、調理師。特殊欄には人形使いってのもある。」すごい…これ以外にもいっぱい職業が…。私はとても迷った。なんたって1度決めたら変えれないらしいから。
数分後。
「んー、じゃあこれにしようかな。」
「……なるほど。これは面白いかも知れないですね。」唯は意味深に笑う。
「……大変お待たせしました。ご登録が済みました。これから貴方の行く世界は、生活基準は中世ヨーロッパ。色々な生物が蔓延り、大陸も7つあると言われています。」
「Koruseit world online。貴方は生きる為に何をしますか?限定された時間で何をしますか?癒しと刺激を貴方に。」
唯がそう言うと、私の目の前が真っ暗になった。
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