復帰
バブみ道日丿宮組
お題:愛と死の慰め 制限時間:15分
復帰
「鏡よ、鏡ーー」
少女が秘石を鏡にくっつけると、光を放つ。
「私の世界を映し出して」
そして言葉は波紋となって鏡の表面を振動させる。
「これで元の世界へ戻れるのよね?」
「そうだよ、お姉ちゃん」
少女の姿に瓜二つのツインテール少女が相槌を打つ。
「あとはこの草薙の剣で私を貫くだけか……」
少女は俯き、思考を走らせる。
これから行うことは歴史改ざん。かつていたものをいることとし、いなかったものをいなくする。言葉では何も間違ったことではないが、人を殺すという事実は言葉に間違いはない。
「そうしなければ、お姉ちゃんがただ辛い世界が残ってるだけだよ」
静かにツインテール少女が告げると、
「先に行ってるね」
鏡の前へ歩き出し、そのまま鏡の中へと吸い込まれていった。
「……わかってる」
そのあとを静かに少女は追う。
少女たちは眩しい光に包まれると、見慣れた場所に立っていた。そこは少女たちの家。かつて住んでた場所だ。ただ違うところがあるとすれば、鏡写しではないことだ。
今までいた世界は何もかもが鏡写しで反転してた。それが戻ったという事実は少女たちを勇気づける。
「お姉ちゃん、あそこにわたしがいるよ」
でも、とツインテール少女が言葉を零す。
その先には確かにツインテール少女に似た少女がいた。けれど、息をしてない。床に倒れて、血溜まりを作ってた。
「遅かったね」
その側に立ってるのは少女と全く同じ容姿の少女。かつて鏡の世界にいた少女であった。
「なんてことしてるのよ……!」
「先に手を打っただけ、これで歴史は妹の死という事実が刻まれた。もうあなたたちが入る隙間はない」
「そうだとしても、実の妹を殺すなんてどうかしてる!」
「こちらをそれで殺そうと思ってた人にどうこう言われる筋合いはないかな」
少女は剣を隠そうとしたが、やめた。相手がその手に包丁を持ってるのに武器を隠しては不利だと悟った。
「それはこっちの世界が私たちの世界だから当たり前のことだわ。あなたがいた世界は確かに歪んでたかもしれない」
一呼吸。
「けれど、鏡を壊せばそんな世界もなくなる」
「それはこっちの全てを破壊する押し付けだ」
もうひとりの少女は包丁を握りしめると、
「でも、それもいいかもしれない」
自らの首を掻っ切った。
「これで姉妹もろとも世界から消える」
糸が切れた人形のようにかつての妹の上へ倒れたもうひとりの少女。その様子を二人はただ見つめることしかできなかった。
これから起こることに恐怖しながらーー。
復帰 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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