テレフォン・ワールド

バブみ道日丿宮組

お題:恐ろしい電話 制限時間:15分

テレフォン・ワールド

 誰にも……身内に教えてないのに電話がなることがある。

 もちろん通販サイトでも使ってない。漏れることのない電話。かかってくるのはだいたい同じ時間で、同じ番号。数字からおそらく携帯電話。

「……ん」

 個人情報がどこから漏れてるのかと散々悩んだ結果、一回出てみることにした。ずっと間違い電話して相手なら気の毒だし、誤解は早めに解決したほうがいいだろう。

「もしもし?」

「もしもし、こんにちわ」

「こんばんわ」

 こんばんわ? 国が違う人なのだろうか。そのわりに同じ言語を話してるのは違和感。私が使ってるのは世界で一般的でないもの。世界的に使われてるのは別の言語。学校で習うやつだ。

「今大丈夫かしら?」

「はい」

 声の主は甲高い声だった。おそらく女性。声変わりをしてない男性の可能性もあるけれど、そこを今考えるのは間違ってる。今大事なのは、相手が間違い電話をしてることを伝えること。

「あの話題を話す前に言いますけど、おそらく間違い電話してますよ」

「いいえ、間違ってないわ。わたしはあなたと話すために電話してるの」

 どういうことだろうか?

「今一人よね?」

「はい、そうですが……」

「なら、あなたの側に男がいるはずよ」

「えっ……? 男の人ですか?」

 部屋を見渡してみても当然のように誰かはいない。男の人の気配なんてありはしない。

「今目があったわ」

「ほんとですか? なら……警察に」

「警察に言っても無駄だわ。あなたの頭がおかしいと判断されて病院送りよ」

 これはあれだろうか、電話の相手が狂ってるのだろうか? それとも見えないなにかがこの部屋に存在するのか? かれこれ2、3年は住んでるけど、誰かに見られてるような感触はなかった。

「ふふ。困ってそうね。ーーさん」

「どうして名前を知ってるんですか?」

 突然名前を言われてびくんと身体が震えた。

「あなたは有名だからよ」

「違うと思います」

 大学でも存在感がなく、プリントをもらえないことだってあるのだ。そんな私が有名なんてことはありえない。

「大丈夫よ。あなたを守るために使者を送ったから、彼に守ってもらうといいわ」

「冗談が過ぎますよ。きりますね」

 付き合ってられない。相手の虚言にわざわざ乗る必要なんてない。

「大学から帰ってきたらわかることだから、別にいいわ」

「どうして大学生だってわかるんですか?」

「さっきいったじゃない。あなたが有名だからよ。まっ今日はこれぐらいにしておきましょ。これから話す機会も増えるだろうし」

 言葉を返そうとしたら、電話はキレた。

「……なんなの」

 いたずら電話だろうと着信拒否することにした。


 けれど、次の日大学から帰ると、一人の少年が私の部屋の前で待ってた。

「こんばんわ」

 そうして私はとある事件に巻き込まれることになるのであった。

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テレフォン・ワールド バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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