第4話 見知らぬ虫歯

 虫歯ができた、歯医者に行きたくない。

 ずっとあのごみ捨て場とカフェとみお君が、奥歯に挟まったまま抜けない。気になるままの日々を過ごしている。


 仕事帰りに通る道、私が使っているわけじゃないよそのごみ捨て場。靴とかさはいつのまにかなくなっていた。


 僕は驚いています、あなたがそこまでバカなことに。とわざわざムカつく言い回しで言って、かさの折れ方の話をした。


「側溝に挟まると速攻であんな折れ方になります」


「なにそれダジャレ?」


「インを踏んでると言ってください。杖ついたり振り回したり」


「よくやったなあ」


「現実はこんなもんですよ」


「まあ殺人事件起きてほしいわけじゃないからね」


「ですよね」


 みお君は指輪をした。帰り支度をする彼は真面目そうに見える。実は夜はいかつい格好してスケボーとかしてるのかも。と私はまた空想する。


 突然の雨、みお君はビニールかさを買った。雨が止んでしまえばかさは邪魔になる。手になにも持ちたくない派のみお君はわざと側溝で速攻かさを折ってごみ捨て場に。


 いやいやみお君、折り畳み傘持ってる。ああ学校じゃ真面目くんで通してるのかも。

 学校…そういやあんまり子どもにビニールかさって持たせないよなあ。キャラクターものとか、よく壊す子どもなのかな。パンプスだってお母さんならそれこそごみ袋に入れて出しそう。


 ま、まさかあれ、みお君のパンプス!?


「りくさん!違います」


 耐えきれなくなったのか、無言の私に反論する。

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