ある天使をみた記憶がないわけでもない
バブみ道日丿宮組
お題:生かされた螺旋 制限時間:15分
ある天使をみた記憶がないわけでもない
『あなたはまだ天使に会えてない』
頭に浮かぶのは1人の少女。
はにかむその顔は、天使と言ってもいい。なのに、彼女は自分を天使とはいわない。逆に悪魔だと囁いてくる。少女の笑顔は螺旋のようにぐるぐると僕の心を回り続ける。
僕は幻想とわかっていてもそんな少女に会いたい。
転生するのであれば、夢の世界が理想。
少女に出会えるなら僕はどんな手でも使うだろう。それが例え……身近にいる少女に似ていたとしてもーー。
「また小説?」
夢の世界から戻ると、少女が手元のノートを覗いてた。
「そうだよ。これは僕の個性といっても過言じゃないからね」
「へたな文章読まされるこっちの身にもなってみてよ」
ジト目でこちらをみつめてくる。
「別にこっちからお願いしてるわけじゃないだろ? 読んでくれないなら親にでも頼んでみるよ」
「そ、そんなことしなくていいから! って、ご両親忙してそんなことしてる暇ないでしょ」
両親は海外赴任ばかりで家に帰ってこない。
なので少女がいうようにそんな暇はない。
「だいたい天才少女であるこの私が読んであげるのだから喜びなさいよ」
「たしかに天才なのは僕も知ってるけど……他がいっさい成長してないよね」
少女を下から上まで見る。
これで僕と同い年の高校生というのだから驚きだ。
神様は実に不公平。
まぁ、僕も身なりはかなり悪い。本の表紙となることのある父親と比べると天と地の差がある。
「どこ見て言ってるのよ! これは成長パラメータが知能へ極端に振られてるせいなのだから!」
なるほど。
そういう考えもあるのか。小説のアイディアに使えそう。
「パラメータか。そういう概念がある作品はゲームになりそうだ」
「すぐそうやって想像に積むのやめない?」
「想像力は数少ない僕の力だよ。君のように真っ直ぐな力じゃないけどさ」
ぐるぐると想像力は螺旋を描く。
あっちでもない、こっちでもない、やっぱりあっち。
いろんな方向へと想像は物語を変える。
「弱い力でもこうして現実へ作り出すのは気持ちがいいんだ」
そっかとどこかで見た笑みを少女は浮かべるのだった。
ある天使をみた記憶がないわけでもない バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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