彼女と、僕の秘密
バブみ道日丿宮組
お題:地獄の衝撃 制限時間:15分
彼女と、僕の秘密
『話をしよう』と彼女はいった。
『わたしたちの本当をはじめるため』ともいってた。
呼び出された場所は、理科準備室。
彼女が部長としていられる、実験部の活動の場。
足並みは軽かった。
どうせまたくだらない実験につきあわされるのだろうとたかをくくってた。
「話ってなんです……えっ?」
それなのに理科準備室に足を入れた僕を襲ったのは衝撃的なもの。
「遅かったのね」
一回りも小さい彼女がそこにいた。いや……ほんとうに彼女なんだろうか?
ここの鍵を持ってるのは顧問と彼女のみーー、
「えっと……別人ですか?」
念のために口から言葉が漏れる。
「違うわ」
髪をさらりと触る仕草は彼女と変わらない。
幼い頃の彼女を見たことはないけど、こんな感じなのだろうか。
「この形態のわたしも見てもらいたかったの」
「形態……?」
彼女と付き合い始めてかれこれ3年。
高校生活のほとんどを彼女と過ごしたはずなのに、知らないことがあるなんて。
「わたしは3ヶ月に1回幼くなるの。寿命もその分のびる」
「幼く……ですか?」
それにしたって幼くなりすぎだろう。
見た目は幼稚園生と言われても誰も否定しない。
ダボダボの学生服が異様に見えるくらいまで小さくなってる。
「普段は付き人がいって人払いしてるのだけど」
そういった彼女の視線には人影があった。しかし、姿かたちは影であって本体がない。
「今回はあなたにも見てもらおうと思ったの」
「……なんでです?」
「大学に入って同棲してるときに知らない女の子がいたらびっくりするでしょ」
それはまぁ……そうだろうな。
今でさえ起きたら彼女が寝息をたててるのにびっくりするのに、それが別人のようにみえる人物だとやばい。
「わたしたちは夜の一族」
夜……?
「人の生死をコントロールする役目を携わる生き物なの」
「それは人間と違うってことですか?」
「本質的には同じものよ。ただこの姿になった時は違う」
彼女はそういってダボダボの学生服の状態でポケットの中からメスを取り出した。
そしておもむろに頬へと走らせた。
いけないと手をのばすよりもそれはずっとはやくて、彼女のキレイな頬から血が飛び散った。
「なんて……ことするんですか」
顔の傷なんて一生モノの傷だ。
「大丈夫。よく見て」
「えっ……なんで?」
「生死を司るってことは傷つけられないという意味でもあるの」
そしてと彼女は一呼吸を置く。
「もちろん人を傷つける能力もある。永遠的に生命を奪うこともね」
「僕に何をさせたいんですか」
「なにもない。ただ知っておいてほしかったの」
彼女が軽く頷くと、身体が宙に浮いた。
影を見る限り、付き人が持ち上げてるのだろう。
「先に帰ってるから、はやくきてね」
そうして彼女たちは、窓から飛び降り霧のように消えた。
それが僕と彼女の本当の付き合いのはじめだった。
彼女と、僕の秘密 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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