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と、言うわけで、トラの子の核兵器をすべて失ってしまった某国は、宣戦布告からわずか三日にして早くも停戦交渉を要求する羽目になった。事実上の白旗だ。そして、ほぼ時を同じくして、日本政府はニュートリノ砲の存在を全世界に公表した。地球上のすべての核兵器を完全に無力化することが可能になる。この事実が世界に与えた衝撃はとてつもなく大きかった。
おそらく最大の核保有国である米国が黙っていないのではないか、と考えられたが、意外なことに米国はニュートリノ砲に対して好意的だった。
"どうせなら米国以外の核を全部消滅させちまおうぜ。おっと、まさか同盟国にνキャノンを向けることは……ねえだろうな?"
米国の声明を要約すると、まあ、こんな感じだ。もちろん、これで米国の核兵器がいつまでも安泰かと言うと、決してそんなことは無い。νキャノンは原理的にどの国でも作ることができる。米国に敵対する国が作ったνキャノンによって、米国が保有する核弾頭が全て無力化する、ということも十分考えられる。
だが、たとえそうなったとしても、米国は通常兵器の戦力も世界随一なのだ。そもそも今まで米国が行ってきた軍事行動で、核兵器が使われたのは広島と長崎以外にないのである。なので、仮に核が全て失われたとしても、それが米国に対して大きなダメージになることもなさそうだった。それよりも、米国はνキャノンの「もう一つの用途」に、非常に関心を寄せていた。
泡を食ったのは、核武装を対外的な交渉カードにしている一部の「ならず者国家」だった。それも当然だ。カードが一瞬にして消滅してしまったのだから。というわけで、某国との紛争に光の速さでケリをつけた日本は、今度はどうやらそういう国から狙われることになりそうだった。
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