第42話 気だるい朝に
◇
けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音で眼を覚ます。
深く深く沈んでいた僕の意識は、ゆっくりと覚醒していった。眠い目をこすりながら、目覚まし時計を止める。
昨日夜更かしをした影響か、体の芯に疲れが残っている気がする。本音を言えば、このまま眼を閉じて、グゥグゥと再び眠りについてしまいたい。
ため息をついて起き上がる。
社会人というものは難儀なもので、自分の体調などお構い無しに仕事の時間はやってくるのだ。
いつものルーティン通りに、コーヒーメーカーのスイッチを入れ、洗面所でゆっくりと歯を磨く。
力を入れず、一本一本ゆっくりと……。
小さくため息をつく。
どうにも、今日は仕事に行くような気分になれなかった。
口をすすぎ、顔を洗い、朝の支度を終えた僕はコーヒーが出来上がるまで、ぼんやりと椅子に座って待っていた。
チラリと壁掛け時計を確認し、まだ出発までには時間に余裕がある事を確認する。
これからコーヒーを飲み、スーツに着替えて出勤し、仕事が始まる……。いつもなら何とも感じないこれらの日常が、何故だか今日はたまらなく億劫だった。
長い休暇をとったせいだろうか、それとも昨日の夜更かしの影響か……あるいはその両方か。
直近で有給を取っていたため、気分が乗らないからといって、会社を休むのは心が痛む。
そんな事を考えていると、コーヒーが出来上がったようだ。
お気に入りのマグカップに熱々のコーヒーを注ぎ、息を吹きかけて覚ましながら安もののコーヒーを口に流し込む。
コーヒーの苦みで、幾分か気分はすっきりとした。やはりカフェインは偉大である。
時間をかけて熱々のコーヒーを飲み終え、スーツに着替えた僕は、家を出た。
向かうは最寄りの駅。
朝だというのに、ギラギラと容赦なく照りつける陽光が鬱陶しかった。
額からじんわりと汗が滲み出る。
あぁ、どうにもやりきれない。
僕の気持ちは一切考慮されず、いつも通りの日常ってやつが今日も始まってしまった。
◇
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