黒猫のルッコに花束を
じゅき
第1話 黒猫ルッコ
朝日が照らす長い廊下を若いメードが歩く。豊かな金髪をシニヨンにした彼女は顔立ちも整っており、背の高さも相まって見るものを惹きつける外見をしていた。
目的の部屋に向かう道中、廊下の窓を開けていく。天気が良いせいもあるが、彼女の足取りは軽やかで、眼鏡越しに見る緑の瞳も優しげだ。
自然の光と風を受けながら辿り着いたのはこの領地の次期領主である青年、ルッコの部屋だ。
ドアをノックして一声かける。
「坊っちゃま。カルダです」
カルダはドアを開け、質の良い家具で整理された部屋へと足を踏み入れる。
窓どころかカーテンさえも開けられていない部屋は薄暗く、静まり返っていた。
ルッコが寝ているベッドを通り過ぎたカルダは、カーテンと窓を開けて新鮮な空気と爽やかな太陽光を部屋に取り入れる。
窓から差し込む光を背に、カルダはベッドへと移動した。
「坊っちゃま、失礼します」
カルダはベッドへ手を伸ばし、シーツと掛け布団の海から一匹の小柄な黒猫を抱き上げた。
少し眠そうな顔の黒猫に向かってカルダは微笑む。
「おはようございます。坊っちゃま」
カルダに挨拶されて、坊っちゃまと呼ばれた黒猫もあどけなさの残る声で返した。
「おはようカルダ。良い朝だね」
そうして、何度も繰り返されてきたこの屋敷の朝が始まる。
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