おバカな婚約破棄のあれやこれや
真理亜
第1話 パターン1
「オリコー! 貴様との婚約は破棄じゃあ~!」
今日は学園の卒業式の日。
卒業パーティーに臨む生徒達の、浮かれた気分を台無しにするような大声を上げたのは、この国の第2王子アホヤネンである。その傍らには最近アホヤネンと噂になっている、バッカーナ男爵令嬢の姿があった。
「婚約破棄ですか。それは構いませんが、理由をお聞きしても?」
涼しい顔でそう答えたのは、アホヤネンの婚約者に当たるオリコー公爵令嬢である。
「貴様は俺様とバッカーナが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られてこのバッカーナを虐めたな! まず、バッカーナの教科書を全て破り捨てた! 次にバッカーナを噴水に突き落とした! 更にバッカーナを階段から突き落とした! 更に更に...」
「あぁ、もうその辺で結構です。どうせ全て冤罪ですから」
「な、なんだとぉ!? 何を根拠にそんなことを」
いきり立つアホヤネンの言葉を遮ってオリコーが断言する。
「だってあり得ませんもの。まず第1に我が校では既に紙の教科書を使っていませんよ? 全てこのタブレット端末で授業を行っております」
そう言ってオリコーはタブレット端末を懐から出した。
「ぬなぁっ!?」
アホヤネンが間の抜けた声を発する。
「授業をサボりにサボっていたあなた方は知らなかったんでしょうね。第2に我が校には噴水も池も存在しませんが。それでどうやってどこに落とせると言うんですか?」
「くぎゅう!」
またもやアホヤネンが奇声を発する。
「そして第3に我が校の階段は全てエスカレーターに、それも転落防止機能付きの最新の物が導入されていますが、どこの階段から落ちたんですか? そもそも階段じゃありませんけど」
「「 びでぶっ! 」」
最後はアホヤネンとバッカーナが二人揃って仲良く玉砕した。
「大方、最近巷で流行りの小説『婚約破棄大好きです!』に影響されたんでしょうけど、少しは捻って欲しかったですね。そのまんまじゃないですか」
二人はその場に崩れ落ちた。
「まぁとにもかくにも婚約破棄は承りました。それではご機嫌よう」
オリコーは軽やかな足取りでその場を後にした。
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