最低な私は、元婚約者を今日も騙します

みかん好き

過去編①


「ねぇねぇお姉さま。私の誕生日プレゼントは貴方の婚約者を頂戴。」

「え?今、何とおっしゃりましたか?」

「ちゃんと聞いてろよ#赤髪__・__#。お前の婚約者を私に寄越せって言ってるの!!」

「お、お人形じゃ駄目ですか?ど、どうして私の婚約者を―――」

「お人形?綿の入った皮の袋なんか欲しいわけないじゃん。それに、お前の婚約者って王子様だよね?あの王子様格好いいし、正直私のタイプなのよね。」

「そ、そうですか。」


椅子に胡座で座りながら、こっちに見下すような視線を向ける水色のドレスを着た茶髪の少女。


この少女は私の妹のラエア。

妹と言っても、ラエアは正室から産まれた妹だ。そして、私は側室から産まれた姉。正室と側室では、正室の方が権力が多い為昔の頃からよくラエアに私はこきつかわれていた。肩を揉んでと言われれば揉んだし、ご飯を食べさせてと言ったら食べさせたし、服を着せてと言われたらその通りに服を着せた。……といっても、これらはまだ楽な物だ。私は使用人じゃないが、これくらいならまだ耐えることが出来た。流石に、使用人がやることで私がへこむことは無かった。


だけど、本当に心が折れてしまいそうなことをラエアに何度も私はされた。

食事中スプーンでスープを飲ませていたら、スープの器を手に持ちスープの中身を私に投げ、私の顔が危うく火傷しそうになったり、階段から突然突き落とされて小指の骨が懸けてしまったり、私の愛していたお人形をギタギタに引きちぎらたり、ベット含め部屋の中を水でびちゃびちゃにされたりもした。


流石に、お人形がギタギタに引きちぎられていた時は本当に心が折れそうになった。顔が半分にちぎられて、体も所々穴が空いていてそこから綿が出てきている人形。お人形は私のお小遣いで勝ったものだが、私に買われなかったらこの人形は無事ではなかったのかと、その日の夜は「ごめんね。ごめんね。」と謝りながら一生分泣いたかと思う程泣いた。


私がこんな目にあっているのは……妹がこんなことを私に出来るのは……私の髪にある。

私の髪は、何故か真っ赤な赤なのだ。ピンクなら可愛かったかもしれないが、十人に聞いて十人が赤と答える程、絵の具に水を溶かさないでそのまま使ったような真っ赤で濃い赤なのだ。


この国……いや、世界においても赤髪を持つ人間が居たなんて聞いたことはない。お母さんやお父さんは両方茶色で、私の赤とは似てるなどお世辞にも言えない。

だから、太陽よりも赤いと思える私の髪は恐れられた。

もう少しこの髪の色が薄かったら良かったかもしれないが、私の髪は真っ赤なことから血に似ていると見られたのだ。血を纏う髪を持つ少女。恐れられて当たり前だろう。私だって、その少女を見たら恐れるかもしれない。……でも、私だって赤色の髪を持つだけで、普通の人間なのだ。親にすら赤い髪で恐れられていた私は、お人形が話し相手であり友達だった。



でも、私はこの赤い髪が嫌いになれなかった。


私の赤い髪が好きだと言ってくれる男の子が居たからだ。


だけど、その男の子さえ奪われようとしている。


…… 私はどうすればいいのだろうか。



泣いているのが悪魔にバレないように、私は下を向いた。

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