空の船~未熟魔法使いの旅~

1.未熟魔法使い

アニカの住む異世界には掟があった。

《10になった子には世界を旅させよ》

名門のラリエム家に生まれながら魔法の使えない……いや、ほとんど使えないアニカも、

対象外になりはしない。

アニカは治癒魔法だけ使えた。

破壊も防御も闇も光さえも、使えないのだった。父は必要以上の鍛錬をさせた。

なのに、次女のモニカよりも劣っていた。

鍛錬の休みに、屋敷を飛び出して、

大魔法使い、セリナの家に行くこともあった。アニカは、父、母、妹、使用人が

大嫌いだった。軽蔑しているのだ。

どれだけ対抗したくても、やり返せない。

やられた傷を癒すことしか出来ないからだ。